2014年8月23日(土)
酪農家廃業で生乳ひっ迫
アベノミクスで輸入飼料が高騰
牛乳・乳製品の原料となる生乳の2014年度上期(4―9月)の生産量が、全国的に前年を2・6%下回る見通しとなりました。アベノミクスの円安による輸入飼料の高騰などで経営が厳しく、酪農家の廃業が続いているためです。これは、酪農家や牛乳メーカー、販売業者の団体でつくる社団法人「Jミルク」がこのほどまとめた「生乳及び牛乳乳製品の需給見通し」でわかりました。
国産生乳の例年の総生産量は年間約760万トンですが、14年度の上期は370万トンにとどまります。地域的には、都府県の生乳生産量の減少が大きく、前年を3・3%下回ります。
バター・脱脂粉乳など加工用の割合が多く、頭数規模が大きい北海道でも1・9%下回ります。
学校給食が始まる9月には、都府県の生乳需要が最も大きくなり、北海道から前年を上回る5万4000トンの生乳が移動するとみられます。このため、バター・脱脂粉乳むけ生乳が上期で11%減ることになる、と「需給見通し」は予測しています。
日本は、バター・脱脂粉乳は、義務的輸入(生乳換算で年間13万7000トン分)もあります。さらにクリスマスなどの需要期に供給不安がでたため、バターを追加輸入する事態になっています。
生乳のひっ迫は、乳製品の値上がり要因となっています。
TPP交渉の先行き不安も
酪農家、北海道農民連の石沢元勝副委員長(釧根地区協議会議長)の話 北海道はこの3年間200軒以上の酪農家の廃業が続き、頭数の減少分のカバーができていない。
要因としては、北海道でも輸入の穀物のエサに頼っているが、それが円安で高止まりになって経営難となっていることがある。
後継者が近くにいない農家は、環太平洋連携協定(TPP)交渉で先行き不安が消えない。「帰ってこなくてよい。廃業したほうが無難だ」と子どもに言う状況がある。
自給飼料を増やすなどのエサ高の対策をとり、TPP交渉から撤退して展望を示さないと、生乳生産を増やすことが厳しい事態となっている。
止まらぬ国産牛の減少
農水省の畜産統計によると、2014年(2月1日現在)の国産牛の頭数と経営戸数は、減少傾向が止まりません。
国産バターが不足するなど厳しい生産・経営状況にある酪農は、全国的には800戸が廃業し、主力の北海道でも230戸が廃業しています。
輸入のエサ高が続いたうえ、環太平洋連携協定(TPP)での譲歩姿勢があり、営農意欲がそがれています。
乳牛は、戸数が前年比800戸(4.1%)減り、1万8600戸でした。飼養頭数は同2万8000頭(2.0%)減り、139万5000頭となりました。
肉牛は、戸数が前年比3800戸(6.2%)減り、5万7500戸でした。飼養頭数は同7万5000頭(2.8%)減り、256万7000頭でした。