2014年8月22日(金)
主張
介護職の処遇改善
心が折れない環境整備を急げ
介護労働の実態が依然深刻です。厚生労働省所管の財団法人「介護労働安定センター」が最近公表した実態調査(2013年度)では、介護労働者の離職率は16・6%と全産業平均と比べて高いままで、介護事業所の56・5%が「人手不足」を訴えています。事業所が職員採用の困難な理由にあげるのは、低賃金と「仕事がきつい」ことです。安心で豊かな老後を支えることが求められる介護職場の環境が劣悪でいいはずがありません。政府は介護職の処遇改善に責任をもって取り組むべきです。
「やりがい」あるのに
「人手が足りない」45・0%、「仕事内容のわりに賃金が低い」43・3%、「有給休暇が取りにくい」34・5%―。介護労働安定センターの調査で介護労働者が回答した悩み・不安・不満のトップ3です。
全労連が7月末に公表した「介護施設で働く労働者のアンケート」(約6300人回答)最終報告は、現場の過酷な実態をさらに生々しく告発しています。
正規職員の平均賃金は月20万7795円で全産業労働者平均月29万7700円と比べ約9万円も低い水準です。「有給休暇がまったくとれない」と答えた労働者は2割を超えました。介護職の職業病とも言われる「腰痛」は63・0%、「肩こり」は57・7%にのぼり、1割強が不眠などの精神的ストレスを原因とする症状が目立つと回答するなど健康問題も深刻です。
利用者に十分なサービスが「あまりできていない」と3割の労働者が感じ、そう答えた人の7割以上が「人員が少なく業務が過密」と指摘しています。職員の目の届かないところで利用者が転倒・転落する事故にかかわったとする答えは、6割もありました。余裕のない職場環境が、サービスの質を低下させ、利用者の安心と安全を脅かしていることは重大です。
アンケートでは7割近くの労働者が「やりがいのある仕事」と回答しています。その半面、6割近くが「もうやめたい」と思うときがあると答えました。多くの人が「健康」と「将来の生活」への不安を抱えながら、仕事にたずさわっていると述べています。在宅介護にたずさわるホームヘルパーの労働環境も厳しい状態です。
意欲をもって選んだ介護の仕事なのに、やりがいを持続させることができず職場を去らざるをえない労働者が相次ぐことは、大きな損失です。医療・介護の国の責任を大後退させる安倍晋三政権の社会保障改悪は介護労働者の処遇悪化に拍車をかけます。介護サービス利用の抑制・削減は、介護事業の経営を困難に追い込み、労働者をますます疲弊させます。安易な外国人労働者の参入拡大は安上がりの介護労働をさらに広げます。処遇改善に逆行する政策はやめるべきです。
国庫負担による賃上げ
介護労働者が生活設計を描ける賃金水準の確保が急務です。国庫負担投入など国民の負担増につながらない対策をとって、大幅な賃上げを行うべきです。人員配置基準の改善も不可欠です。
高齢者人口がピークを迎えようとするなか、介護労働者の役割はますます重要です。介護制度を充実させ、必要な介護人材を確保し、賃上げなど雇用条件を改善することは、日本経済の成長にも大きく貢献する道でもあります。