2014年8月19日(火)
スコットランド 独立投票まで1カ月
反対派優勢 変わらず
国営医療・通貨めぐり論争
【パリ=島崎桂】9月18日に実施される英国北部スコットランドの独立を問う住民投票まで1カ月を切りました。将来の国の姿を描ききれない独立賛成派に対し、反対派が優勢を維持したまま選挙戦は最終盤を迎えています。
英調査会社ユーゴブが7日に発表した調査結果では、独立に反対する人の割合は55%、賛成は35%にとどまりました。他の複数の調査結果でも、これまでに賛成多数となったものはありません。ただ、「必ず投票に行く」と答えた人の割合は賛成派に多く、一時停滞していた賛成派の増加傾向は復調の兆しをみせています。
賛成派と反対派はこれまで、独立に伴う欧州連合(EU)との関係や英王室の扱い、国防や核兵器をめぐり多くの議論を重ねてきました。終盤の現在は、国民保健サービス(NHS)と通貨問題が最大の争点となっています。
TV討論
全国民が無料または低額で利用できる国営医療サービスのNHSについては、双方が維持・拡充を主張しています。
賛成派の運動体「イエス・スコットランド」は、中央政府の緊縮政策に伴うサービス低下を批判。独立後の施策として、軍事予算削減によるNHSの拡充を訴えています。
対する反対派「ベター・トゥゲザー」は、独立費用が医療予算を圧迫するとして、スコットランド自治政府の権限拡大による医療拡充を求めています。
通貨問題に関し賛成派は、独立後も英国の通貨ポンドを維持すると主張。しかし、英政府は独立後のスコットランドがポンドを使用することを断固拒否しています。
5日、独立をめぐる初のテレビ討論会では、通貨問題を主軸に、反対派を率いる英労働党のダーリング前財務相と、賛成派でスコットランド自治政府のサモンド首相が衝突しました。ポンド維持の見通しが立たない中「Bプラン(代替案)はあるのか」と迫るダーリング氏に対し、サモンド氏は「ポンドを維持する」との主張に終始。結果、雄弁家として知られるサモンド氏有利との前評判を覆し、多くの世論調査機関がダーリング氏の「勝利」を伝えました。
各地でも
スコットランドの独立は国内問題にとどまらず、英国の欧州連合離脱や、欧州各地の分離独立に向けた動きを勢いづけるとみられます。
英国内での反EU世論の高まりを受けた保守党のキャメロン首相は、次期総選挙で勝利した場合、EU離脱の是非を問う国民投票の実施を公約しています。現状では同党が勝利する見込みは低いものの、スコットランドは英国の他地域に比べて親EU派が多く、独立に伴うEU残留票の減少は避けられません。
また、独立機運が高まるスペイン東部カタルーニャ州やベルギー北部フラマン地方は、スコットランドと同様に、自前の経済力に対する自負と中央政府への不満を抱えています。スコットランドの独立は、これらの地域にとって「先例」となる可能性があります。
投票日が近づく中、著名人による態度表明も相次いでいます。
7日に発表された独立反対を呼び掛ける連名書簡には、英ロックバンド「ローリング・ストーンズ」のミック・ジャガーさんや、「車いすの天才科学者」として知られるスティーブン・ホーキング博士らが署名。小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者J・K・ローリングさんも、反対派の運動に多額の寄付を行っています。
一方の賛成派には、俳優のショーン・コネリーさんや、映画にもなった小説「トレインスポッティング」の作者アービン・ウェルシュさんらが支持を表明しています。