2014年8月15日(金)
米専門家 イラク 泥沼化に懸念
“空爆は情勢悪化招く”
【ワシントン=島田峰隆】オバマ米政権がイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国」の進撃を止めるとしてイラクへの軍事介入を強めるのに対し、“米国が再び際限のない戦争の泥沼に陥る”と懸念する声が米国内の専門家から出ています。イラクの宗派対立や過激派台頭の原因に米軍による2003年の侵攻があるとして、介入をやめるよう求める意見も聞かれます。
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03〜05年にアフガニスタン駐留米軍の司令官を務めたデービッド・バルノ氏は米メディアに、ある程度空爆しても過激派組織の勢いを止められない場合、いっそうの空爆や地上軍派遣を求める圧力が強まると指摘。「イラクでの軍事力行使は巨大な橋であり、それはいったん渡ると引き返すことが極めて難しいものだ」と述べました。
米シンクタンク「外交問題評議会」の軍事専門家、スティーブン・ビドル氏も「過激派の明確な敗北」が見えない限りオバマ政権は軍事介入拡大の圧力を受け続けるとし、「終わりの見えない展開や泥沼に陥る危険が極めて現実的だ」としています。
米シンクタンク「政策研究所」のフィリス・ベニス研究員は「イスラム国」がこれほどの脅威になった要因の一つに、米軍の侵攻で行き場を失ったフセイン前政権の軍幹部らが過激派を支援するようになったことを指摘。宗派対立も「米国が侵攻で持ち込んだもの」で、「空爆は状況を悪化させるということが教訓のはずだった」と述べました。
米誌『フォーリン・ポリシー』は、米国の新保守主義(ネオコン)勢力がイラク戦争を仕掛けなければ「イスラム国」は存在しなかっただろうと指摘。「中東情勢を悪化させるのは米国による強硬な介入だ」「最良の対処は米国が今以上に身を引くことだ」と論じています。