2014年8月10日(日)
証言 戦争
日本に信頼 助かる
イラクで拘束されながら解放 フリージャーナリスト安田純平さん(40)
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集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行するなど「海外で戦争する国」づくりへ暴走を続ける安倍晋三政権―。フリージャーナリストの安田純平さん(40)は2004年、イラク国内を取材中に現地の武装勢力に拘束されたことがあります。
目隠しをされ、車で連れまわされ、目の前で銃に弾をこめられました。「アメリカのスパイと疑われ、捕まりましたが、3日で解放。これには日本の民間企業やNGO(非政府組織)の活動が築いてきた信頼がありました。今回の『閣議決定』で海外で武力行使をすれば、その信頼が失われてしまう」といいます。
人質事件相次ぐ
当時イラクで安田さんも含めジャーナリストやボランティアの日本人人質事件が相次ぎ、日本国内では「自己責任論」によるバッシングの嵐が吹き荒れました。
「安倍首相は集団的自衛権行使容認の口実にボランティアの救出ということをあげました。救出される人とはどういう人か。国が認めたボランティアであれば救出し、そうでない人はバッシングする。そういうことが繰り返されていくうちに、国に文句を言うべきではないという価値観の統制が強まっていく」と危惧します。
誤ったイラクの大量破壊兵器保有情報を口実に、ブッシュ前米政権が03年3月に起こしたイラク戦争。日本は01年11月にインド洋に海上自衛隊を派兵したアフガン戦争に続き、03年12月にイラク派兵を開始。陸上自衛隊がイラク南部サマワで給水活動、航空自衛隊がバグダッドなどで米兵の空輸をしました。約4500人が死亡した米軍や約180人が死亡した英軍と違い、日本はほとんど被害を受けませんでした。
歯止めにならぬ
「安倍首相は国会で、大量破壊兵器がないと証明できなかったイラクに問題があったとして、“イラク戦争が間違っていた”とは認めなかった。こんな国は他にありません。陸上輸送など、イラク派兵以上のことをやろうとしているのが、今回の『閣議決定』です」
「閣議決定」では、「現に戦闘行為を行っている現場」では支援活動は実施せず、戦闘行為が行われた場合は、休止または中断するとしています。
「こんなのは当たり前のこと。陸上輸送について説明しただけで、何の“歯止め”にもならない」
07年、イラク国内で基地建設業者に給食サービスする料理人として潜入取材した安田さんは、輸送部隊での移動も体験しました。
「その時は、途中で戦闘が行われていたため引き返しましたが、現地で知り合った運転手の中には襲撃を受け、人質になったケースも。自ら武力行使しなくても襲撃を受けるのです。その場所が戦闘地域になるかどうかは襲撃する相手が決めることです」
安田さんはいいます。「戦争とは、私たちが権限を与えている国家が人を殺し、社会を破壊すると言うことです。その決断が妥当かどうか、私たち有権者は厳しく審査する必要があります。そのためには戦場で何が起こっているか知らなければならない」(釘丸晶)