2014年8月8日(金)
ポト派元最高幹部に終身刑
カンボジア 大量虐殺で特別法廷
【ネピドー=松本眞志】1970年代後半のポル・ポト政権下で起きた大量虐殺を裁くカンボジアの特別法廷は7日、ポト派最高幹部だったヌオン・チア元人民代表議会議長(88)、キュー・サムファン元国家幹部会議長(83)の有罪を認定し、終身刑を言い渡しました。
ニル・ノン裁判長は「ヌオン・チアとキュー・サムファン両被告は、極端な“毛沢東主義革命”の一環として体制による組織的な強制移住、殺人、処刑を共謀した」とのべました。
ポル・ポト政権下では、「私有財産の廃止」の名による財産の没収が行われ、米国やソ連、ベトナムのスパイなどの口実で多くの国民が強制労働や虐殺、飢餓状態に追い込まれて200万人以上もの死者が出たといわれます。これまでに起訴されたうち、トゥールスレン政治犯収容所のカン・ケ・イウ元所長に対する終身刑判決が確定していますが、ポト派の元最高幹部に判決が出されるのは初めてです。
ヌオン・チア、キュー・サムファン両被告は2010年9月、人道に対する罪やジェノサイド(集団殺害)などの罪で起訴され、11年6月に初公判が行われました。その後、審理迅速化のための公判の分割により、1975年4月の首都プノンペンから農村部への市民の強制移住など一部の罪状について、先行して審理が進められました。
検察側は論告で「国民を残虐に非人道的に扱い、権力のために殺人を続けた」として被告に最高刑の終身刑を求刑しました。これに対して両被告は「国民を虐殺する理由は一切なかった」(ヌオン・チア被告)などと無罪を主張してきました。
特別法廷は二審制で上告できます。両被告に対しては、ベトナム人や少数民族チャムに対するジェノサイドや強制結婚、レイプなどの罪状についても審理がすすめられています。
カンボジア特別法廷 ポル・ポト政権(1975〜79年)による大量虐殺などの犯罪を裁くため、国連の支援を受けてカンボジア国内法に基づいて設置された特別法廷。二審制。2006年に活動開始。裁判官は、一審がカンボジア人3人と外国人2人、二審がそれぞれ4人と3人で構成。カンボジアは死刑廃止国のため最高刑は終身刑。