2014年8月8日(金)
インド・モディ新政権外交
周辺国重視は好感
日米との核、軍事協力に懸念
【ニューデリー=安川崇】5月末に発足したインドのモディ政権。序盤の外交では南アジア諸国や中国の首脳と相次いで会談するなど、周辺国重視の姿勢を打ち出しています。政権が目指す経済成長の前提として、地域諸国との関係の安定を目指す姿勢に、メディアはおおむね好感を示しています。一方、日本や米国との直接対話は今月以降に本格化。原子力や軍事での協力強化も目指しており、国内平和団体は警戒しています。
モディ氏は3日、インド首相としては17年ぶりにネパールの首都カトマンズを訪問。コイララ首相との会談のほか、外国首脳として初めてネパール制憲議会で演説しました。
出発前の記者会見で外務省のアクバルディン報道官は、モディ首相が6月、就任最初の外遊先にブータンを選んだと指摘。「これらは南アジアの隣国関係を重視していることの表れだ」と強調しました。
スワラジ外相もすでにカトマンズを訪れたほか、バングラデシュの首都ダッカも訪問しています。
地元紙は評価
ヒンドゥスタン・タイムズは2日の社説で、インド経済にとっての周辺国の重要性を強調。「安定と経済成長にとって、周辺国との連携を改善することの重要性を政府は理解している」と評価しました。
これらの周辺国外交を「中国へのけん制」(主要紙)と勘繰る向きもあります。
この対中関係の面では7月、「国際外交の初舞台」として訪れたブラジルでの新興国(BRICS)会合の際、モディ氏は中国の習主席と会談。習氏は今秋中国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)にモディ首相を招待しました。
アジアン・エイジ紙は「中国との関係改善は地域の安定に欠かせない」と歓迎しました。
反核団体警戒
一方、7月末のケリー米国務長官の訪印に続き、今月にはヘーゲル米国防長官も訪印。スワラジ外相は「防衛協力の活発化」に期待を表明しました。9月のモディ首相訪米ではオバマ大統領との会談が予定されています。
日本の安倍政権との「友好」を強調しているモディ氏は、今月末にも訪日するとみられます。両国間では日本からの核技術提供を可能にする日印原子力協定の締結交渉や、軍事転用の容易な日本製航空機の輸出交渉などが進行中です。
反核団体は警戒心を募らせます。反原発の全国組織・核軍縮平和連合関係者は「政府が訪米・訪日で先進国との核協力、軍事協力を大きく進めようとしないか、注視する」と語っています。