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2014年8月7日(木)

被爆者に背を向けた首相

集団的自衛権「閣議決定撤回を」の声に

「抑止力」と繰り返す

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 「69年間、1人の外国人も殺さず、1人の戦死者も出さなかったのに、殺し、殺される国にするものだ」。6日午前、広島市内のホテルで安倍晋三首相と面談した被爆者が、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」撤回を求めました。しかし、安倍晋三首相はこれを一顧だにせず、「抑止力」の名で解釈改憲を正当化しました。広島では首相に対する怒りと失望が広がりました。

 被爆者団体の7氏と向きあった首相は、相手の目を見て要望を聞くことはありませんでした。2人目の話の途中から手元の資料に目を落とし、さらにはテーブルに両ひじをつきました。

 ところが、最後に、16歳で被爆した吉岡幸雄さんから「閣議決定」の撤回を直訴されると、にらむような視線を向けました。そして手元の原稿を読まず、こう言い放ちました。「国民の命と平和な暮らしを守るためだ。戦争をする国になるという考えは毛頭ない」

 会談後の記者会見では、地元記者から「被爆地では抑止力に頼る安全保障の限界を指摘する声もある」「集団的自衛権ではなく、核兵器のない世界に向けて、核の傘からの脱却も含めて、武力に頼らない安全保障の新たな仕組み作りの考えはないのか」と問われました。

 これに対して首相は「抑止力によって、日本が戦争に巻き込まれる恐れはいっそうなくなる」と強弁。さらに、「抑止力が機能していることは多くの国民が理解している」とも述べました。たった今、地元記者から「抑止力」への疑問が出されたのを聞いていたのかと疑わざるを得ない受け答えでした。

 戦後、日本政府は究極の「抑止力」である米国の「核の傘」=「核抑止力」に頼り、国連での核兵器廃絶決議にも後ろ向きな姿勢を取りつづけてきました。「抑止力」にこだわることで、被爆地の願いに真っ向から背いていることを、首相はまるで理解していないようです。

 広島市の松井一実市長は6日午前に読み上げた「平和宣言」で、安全保障環境が増す今こそ、「日本国憲法の崇高な平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要がある」と訴えました。

 「殺し、殺される国」に直結する「閣議決定」は、平和な世界を願う被爆地の願いに真っ向から反することが、はっきりと示されました。 (酒井慎太郎)


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