2014年8月6日(水)
抑止力依存前面に
14年版防衛白書 際限ない軍拡の危険
2014年版防衛白書は、この1年間に安倍政権が憲法を踏みにじって強行してきた安保政策の大転換を網羅した内容で、分量も昨年比で71ページ増と、軍事政策の拡大を反映しました。自衛隊増強と日米同盟強化によって抑止力を向上させ、軍事力で日本の安全を守る方針へ転換する姿勢を前面に押し出すものです。
抑止力とは一般に、相手が攻撃にでれば報復によって受容できない損害を被ることを認識させることで、相手の行為を思いとどまらせることを意味します。そもそも憲法9条に反する、軍事力による脅しの論理です。
中国や韓国との首脳外交が停滞したままの安倍政権が抑止力依存の安全保障に踏み出せば、日本の安全を守るどころか、周辺国との緊張を高め、軍拡競争に陥る危険があります。
白書は、安倍政権が昨年末に策定した「防衛計画の大綱」が目指す「統合機動防衛力」についても詳述。民主党政権時との違いについて、「防衛力の『質』と『量』を必要かつ十分に確保し、抑止力と対処力を高めていく」とし、軍拡志向を露骨に示しています。
政府は、集団的自衛権行使を容認する「閣議決定」により、「決して軍拡につながることはない」(内閣官房の一問一答)と強調します。しかし、安倍政権は2年連続で軍事費を増額し、今後も自衛隊増強を継続する方針。「軍事力を広範かつ急速に強化している」と白書が警戒する中国との軍拡競争に突入しつつあるのが実態です。
さらに白書は、中国や北朝鮮への脅威認識を強めるだけでなく、領土や主権、経済権益などをめぐる対立を、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」として定義。これが「増加する傾向にある」と指摘しました。
尖閣諸島をめぐる中国との領有権問題や、東南アジア諸国と中国との南シナ海での対立を念頭に置いたものとみられます。
昨年の中国による防空識別圏設定以来、周辺空域では自衛隊機と中国機の異常接近事案が続いており、緊張が高まっています。しかし、安倍政権は外交努力や海上保安庁による対処で本来解決すべき「グレーゾーン事態」に、自衛隊の早期出動を検討する逆行ぶりをみせています。
近隣外交に無策のまま、憲法破壊の軍事一辺倒を続ける安倍政権の暴走を、白書は余すところなく反映しました。(池田晋)
防衛白書 日本の軍事政策や周辺国の情勢について国民の理解を得ることを目的に、防衛省が毎年刊行している報告書。1970年に初めて刊行され、今年で40回目。