2014年8月5日(火)
主張
川内原発再稼働
国も規制委も責任を取らない
安倍晋三政権が、全国で運転を停止している48基の原発を再稼働させる突破口にとねらっている、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の原子力規制委での審査が大詰めです。原子力規制委は「新規制基準」を満たしているかどうかを判断するだけで、「安全」を保証するわけではないとしています。ところが政府は、規制委の審査で合格すれば再稼働させると、規制委に“丸投げ”です。万一事故が起きた場合の対策や避難計画は、九州電力と地元自治体任せです。国も規制委も安全に責任を持たないまま、原発を再稼働させるのは、許されることではありません。
審査は安全を保証しない
原子力規制委はすでに川内原発1、2号機についての「審査書案」を公表しており、8月15日までの1カ月間、「パブリックコメント」と称して国民から意見を公募したあと、正式に審査書を決め、「新規制基準」を満たしていると発表する見込みです。規制委での審査はあくまでも、東京電力福島原発事故後つくられた新しい「規制基準」に適合するかどうかの判断で、「安全」を保証するものではないというのは、これまでも規制委の田中俊一委員長らが繰り返し表明している通りです。
実際、「審査書案」では、地震や津波の想定をこれまでより引き上げましたが、それで被害がなくなる保証はなく、その対策も配管を強化したり一部の堤防を高くしたりしただけです。川内原発の場合心配されるのは火山の噴火による火砕流などの影響ですが、「審査書案」は「可能性は十分小さい」といって、九州電力に監視を強めるよう求めるだけです。福島原発事故のような重大事故対策も間に合わせで、これで「安全」といったのでは、それこそ規制委の名前が恥ずかしくなります。
にもかかわらず、原発を「重要なベースロード電源」と決めている安倍政権は、規制委の審査で合格した原発は再稼働させるとしています。規制委が審査に合格しても「安全」ではないといっているのに、なぜ安倍政権は再稼働させても「安全」だといえるのか。まさに新たな「安全神話」そのものというしかありません。
現在の制度では、原発の再稼働は、規制委が審査したあと事業者である電力会社と地元自治体が合意すれば強行されます。それではあまりに無責任ではないのかというので、川内原発の地元の鹿児島県や薩摩川内市も、政府が再稼働の必要性を文書で示すなど、責任を明確にすべきだと言い出しています。もちろん必要性を明確にするのと安全は別です。再稼働には反対していない、鹿児島県など地元自治体の責任も問われます。
万一の避難計画がない
原発の地元では不安と懸念が噴出しています。政府も規制委も重大事故の場合の住民の避難は自治体任せですが、自治体の計画通り避難できないことや避難が困難な福祉施設などの対策がないことが明らかになっています。これまでは県・薩摩川内市と九州電力の協定だけで運転を認めてきましたが他の市町村からも協議や協定参加を求める声が相次いでいます。
原発が事故を起こせば、広範囲に被害を及ぼすことは福島原発事故で証明済みです。住民の安全を最優先するなら、危険な原発再稼働の動きは、まず中止すべきです。