2014年8月2日(土)
主張
最近の労働統計
実質賃金低下は軽視できない
ことし春以降の労働統計で、賃金の上昇分から消費者物価の上昇分を差し引いた、実質賃金の急速な低下があらわになってきました。厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は1年前に比べ(前年同月比)3・8%の減少です。調査方法は違いますが総務省の家計調査報告でも、勤労者世帯(2人以上世帯)の6月の実収入は同じく実質6・6%の減少です。実質賃金の落ち込みは労働者の生活悪化に直結します。労働者の収入を増やすとともに、消費税の増税はやめ、物価の上昇を抑える対策が求められます。
消費税増税が直撃
毎月勤労統計調査(毎勤統計)でみた実質賃金は、昨年7月から前年同月比で1〜2%前後のマイナスを続けていましたが、ことし4月に3・4%のマイナスと一気に低下幅が拡大しました。5月も3・8%、6月(速報)も3・8%と低下を続けています。丸1年連続の実質賃金の低下です。
実質賃金が下がり始めたのは、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の影響で円安が進み食料品やガソリンなどの輸入価格が上昇して、投機などの影響もあって消費者物価が上昇を始めた時期と一致します。賃金が上がらないのに物価だけが上がり、そのしわ寄せが労働者に押し付けられたためなのは明らかです。
その実質賃金の低下がことし4月以降大幅になったのは、4月から消費税の税率が5%から8%に引き上げられ、それをきっかけに消費者物価が急上昇したためです。全国の消費者物価指数は4月3・4%、5月3・7%、6月3・6%と上昇しています。物価の上昇は給与所得者のように毎月の収入が決まっている人ほど影響が大きくなります。実質賃金の低下は、消費税の増税がとりわけ労働者の暮らしを直撃していることを浮き彫りにしています。
見過ごせないのは、今年の春は春闘での賃上げを求める労働者のたたかいもあり、毎勤統計で見た現金給与は、基本給を示す「所定内給与」でも、残業代などを含めた「決まって支給する給与」でも、春以降増加に転じているのに、実質賃金の低下が続き、さらに拡大していることです。その原因は、賃上げがまだまだ不十分なためと、消費税増税の破壊的な影響によることは明らかです。
厚生労働省の集計でも、今年の春の民間企業の賃上げ率は2・19%で、昨年よりは0・39ポイント高いものの、消費税率引き上げの3%(ポイント)には及びません。消費者物価は待ったなしで上がりますから、実質賃金が低下するのは避けられません。賃上げと同時にこれ以上の消費税増税を絶対に許さないことが重要です。
労働分配率引き上げて
日本の実質賃金は、長期的にも伸び悩んできました。ことしの政府の年次経済財政報告(かつての経済白書)は、実質賃金が長期的に見ても労働分配率の低下と交易条件の悪化で伸び悩んでいることを指摘し、その改善を求めました。大企業が売り上げやもうけを増やしているのに、労働者に配分する労働分配率が下がっているため、実質賃金が低下していることを政府も認めざるをえません。
大企業のもうけと内部留保を賃上げに回させることが、実質賃金引き上げのために不可欠です。