2014年7月29日(火)
韓国船沈没から100日
「真相究明」の声広がる 特別法制定へ署名や集会
韓国で300人近い犠牲者を出した客船「セウォル号」沈没事故に関する特別法の制定が遅れています。遺族らは4月の事故から100日を迎える24日までに同法の制定を求めていましたが、見通しは立っていません。国民からは「朴槿恵(パク・クネ)大統領は約束を守れ」と厳しい批判の声が上がっています。(栗原千鶴)
遺族らが求めているのは、捜査権と起訴権を与えられ、独自の調査によって事故原因などを解明できる「真相究明委員会」の設置を盛り込んだ特別法の制定です。遺族らが集めた同法の制定を求める署名は、350万人に達しました。
しかし、政権与党のセヌリ党は「(捜査権を付与する野党案は)刑事司法の根幹を揺るがしかねない」としています。これに対して最大野党の新政治民主連合は「聖域なき真相究明を拒否している」と非難。与野党の溝は埋まっていません。
広場に数万人
現地からの報道によると24日、韓国各地で特別法の成立を求める集会などが行われました。ソウル市庁前広場には、特別法の制定を求める数万人の市民が、雨のなか集まりました。
高校2年生の息子を亡くした女性は「子どもが死んだ理由を明らかにしてくれということが、欲張りでしょうか」と心情を吐露。息子に語りかけるように「特別法を制定して、このような苦しみを繰り返さないことを約束する」と決意を語りました。
遺族らでつくる「セウォル号」家族対策委員会のキム・ビョングォン委員長も「いまや家族が直接動き、特別法を制定させることにした。家族の意見を反映した特別法をつくると約束した朴大統領に、約束を守るよう要求する」と力を込めました。
一方、運航会社の事実上のオーナーで、横領などの容疑で指名手配されていた兪炳彦(ユ・ビョンオン)容疑者が遺体で発見されたことで、警察のずさんな初動捜査が浮き彫りになりました。
国民は不信感
遺体が6月初旬に見つかっていたにもかかわらず、21日のDNA鑑定の結果で同容疑者だと判明するまで、地元警察は「ホームレス」と判断していたことが判明。警察幹部が解任されました。また検察当局が、5月に潜伏先の別荘を捜索した際、隠れていた同容疑者をとり逃していたことも発覚。国民の不信はさらに大きくなっています。
政府は事故を教訓に「国家大改造国民委員会」を立ち上げると発表。首相と民間代表が共同委員長を務め「公務員改革」「安全革新」「腐敗解消」「意識改革」の各分科会で議論を進めるとしています。ただ、政府内にはすでに同様の機関があるため、実効性を疑問視する声が出ているのが実情です。