2014年7月27日(日)
きょうの潮流
ちまたに「うまい、やすい、はやい」があふれるようになったのはいつ頃だったか。いまや街中にはチェーン店が軒を連ね、何でもすぐに口に入る生活が当たり前のように浸透しています▼29日の「土用の丑(うし)」を前にウナギ商戦がピークを迎えています。昔のごちそうも最近はスーパーやコンビニ、回転ずしや牛丼店にまで登場。ヨーロッパに続いてニホンウナギも絶滅危惧種に指定されながら、相変わらずの過剰ぶり▼世界のウナギの7割は日本人の胃袋に収まっているそうです。稚魚もどんどん減るなかで中国や台湾から大量に輸入。手頃な値段で食べられる最後の年かもしれない、と関係者が不安を示す現状にも、国内の保護対策はほとんどとられていません▼ウナギは、地球環境を語る魚といわれます。ニホンウナギは日本から2千キロも離れたグアム島近くの海で生まれ、海流に乗って移動します。黒潮に乗り換え、姿を変えながら陸地に近づき、川をさかのぼる。潮の流れや水温の変化に非常に敏感です▼人間による環境破壊も深刻な影響を及ぼしています。河川や湿地、干潟などの埋め立て、遡上(そじょう)を阻むコンクリートやダムの壁。水質汚染や自然破壊が昔から付き合ってきた仲間を脅かしてきました▼ウナギは長い距離を長い時間をかけて動く“スローな生き物”です。ゆっくり、のんびりと地球をまたにかける。その存在は自然環境や食生活のあり方を映し出します。彼らが住みやすい世界は、私たち人間にとっても望ましいはずです。