2014年7月26日(土)
中国 食品安全 憤る市民
行政の監督部門は人不足で企業任せ
政府の責任問う声も
【北京=小林拓也】中国の米国系食品会社「上海福喜食品」が使用期限切れの食肉を加工していた問題が、中国国内に波紋を広げています。同社は、使用期限から半月近くも過ぎた鶏肉を期限内のものと混ぜてナゲットを作ったり、日付を改ざんしたりして、期限切れ肉を使用。従業員が床に落ちたハンバーグや鶏肉をそのまま生産ラインに戻したりしていました。
メラミン汚染の粉ミルク、成長ホルモン剤を過剰に投与した鶏肉など、食の安全問題が頻発する中国。上海在住の男性(34)は「中国は食品問題が多すぎる。また問題が出てきたという感じだ。今回の事態に、みんな憤っている」と語ります。
この問題では、政府の監督責任を問う声も上がっています。
「行政の不作為で監督部門を提訴すべきだ」。23日付の中国共産主義青年団の機関紙・中国青年報はインターネット上での怒りの声を紹介し、「ネット上では、43・3%の人が監督部門に怒りをぶつけている」と指摘。毎回メディアの暴露後に関係部門が動きだすとし、「なぜ監督部門の仕事は受動的なのか」と疑問を呈しました。
23日付の中国紙・新京報は、ここ数年、食品分野の監督権限を一つの部門に統一する行政改革が進んだものの、業務量の増加の割に人員はほとんど増えていないと指摘。上海地域では監督部門の人数は20〜30人程度だろうといいます。業務も企業が提出した文書をチェックする方法が主で、企業の「自律」任せになっていると伝えました。
また、食品安全法が規定する違反企業への罰金も低く、企業にとっては打撃にならないといいます。中国青年報は、ネット上では2割以上が「食品犯罪に対する処罰を厳しくすべきだ」と呼びかけていると紹介しました。
今回の事件が発覚したのは、上海のテレビ記者の数カ月にわたる潜入取材と元社員の情報提供。20日夜の放送直後、上海市当局が立ち入り調査し、生産停止を命じました。22日付の中国紙・京華時報は「機能していない行政の監督を補うため、メディアが監督の役割を発揮する必要がある」と強調しました。