2014年7月24日(木)
安倍政権 入院給食費値上げ計画
病床しめ出しねらう
安倍政権は入院給食の患者負担額の値上げを計画しています。厚生労働省は社会保障審議会の医療保険部会に、「調理費相当分など」を新たに課す案を示しました(7日)。入院からのしめ出しを強め、病床を減らすのがねらいです。 (杉本恒如)
現在、一般病床と精神病床では食材費分として1食260円が患者の負担になっています。長期療養のための療養病床ではこれに加え、調理費分1食200円が徴収されています(低所得者は別料金)。一般病床と精神病床で同程度の値上げがされれば、1日3食で600円、ひと月なら1万8千円を超す大幅な負担増となります。
「治療の一環」
もともと入院給食は治療の一環と位置付けられ、公的保険で受けられる「療養の給付」(治療や薬などの現物給付)に含まれていました。ところが1994年に連立与党(新生、公明、日本新、民社)と自民、社会、さきがけの賛成で「療養の給付」から外され、1日600円が患者負担とされました。日本共産党は「治療の一部である入院給食の患者負担は世界の常識に反する」と反対しました。
公的医療保険では、「療養の給付」に含まれる治療や薬の患者負担は定率(年齢に応じて1〜3割)です。しかし入院給食は「療養の給付」から外されたため、患者負担額が勝手気ままに引き上げられてきました。(表)
療養病床に入院する65歳以上の患者の負担に調理費分が上乗せされたのは2006年。病気になりがちな高齢者を狙い撃ちして長期入院からしめ出すもので、負担に耐え切れない患者の退院が急増しました。
今回は、一般病床や精神病床に入院する全年齢の患者にも「調理費分など」を課そうというのです。
在宅も支援を
石川県保険医協会の工藤浩司事務局長は「『療養の給付』から外れた入院給食は、患者負担に上限を設けた『高額療養費制度』の対象になりません。月8万円以上の上限いっぱいまで医療費を払っている重症患者も含め、すべての入院患者が大変な負担増を強いられます。必要な入院治療を受けられない事態が広がりかねません」と危惧します。
入院給食の患者負担は「在宅療養との公平を確保するため」というのが厚労省の説明です。しかし工藤氏は「管理栄養士が医学的な見地から指導する入院給食は、単なる栄養補給ではなく治療の手段であり、本来『療養の給付』に含めるべきものです。『在宅療養との公平』をいうのなら、在宅患者にも治療食を保障すべきです」と強調します。
日本栄養士会は、入院給食の患者負担増には「適切な医療を受ける立場から同意できません」と表明。在宅療養者にも「管理栄養士による食事(栄養)指導を充実する」よう求めています。
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