2014年7月18日(金)
主張
川内原発審査書案
これで再稼働などありえない
こんな審査に「合格」したからといって、原発を再稼働させるなどというのが、絶対に許されないのは明らかです。
原子力規制委員会が、東日本大震災後の新しい規制基準にもとづいて審査してきた九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について、「適合」と認める審査書案を公表しました。30日間の意見公募のあと正式決定されますが、適合性審査は安全を保証するものではありません。規制基準は抜け穴だらけで、事故が起きたときの避難計画さえ対象外です。安倍晋三政権が審査に合格した原発は再稼働させるなどというのは言語道断です。
新たな「安全神話」の危険
現在日本にある48基の原発は事故や定期点検ですべて運転を停止しており、この夏の電力も「原発ゼロ」でまかなえる計画です。にもかかわらず、川内原発を突破口に、電力業界が審査を求めている全国12原発19基の原発を再稼働させるというのは強引すぎます。
新規制基準は東日本大震災を踏まえ、想定される地震や津波などの基準を見直したものですが、東京電力福島第1原発事故の教訓も明らかにならないまま、原発を運転させることが前提です。いったん事故を起こせば取り返しのつかない被害を及ぼす原発事故への真剣な反省はありません。新しく盛り込んだ重大事故への対策も間に合わせです。規制委の田中俊一委員長自身、基準に適合しても安全が保証されたわけではないと繰り返し発言しており、基準に適合したから「安全」だなどと再稼働を急ぐ安倍政権の姿勢は、新たな「安全神話」そのものです。
川内原発の審査書案では、想定される地震の揺れ(基準地震動)は620ガルに、津波の高さは約6メートルに引き上げ、防護壁建設などの対策はとったことで「適合」としました。しかし抜本策にはほど遠く、基準以上の地震や津波がこない保証もありません。
なにより川内原発の場合、近くに阿蘇、霧島、桜島などの火山があり、大噴火した場合は火砕流などの影響が懸念されます。にもかかわらず審査書案は、「安全性に影響を及ぼす可能性は十分小さい」などと九電の言い分を丸のみしています。審査に合格しても安全といえないのは明らかです。
新しい規制基準の最大の問題は、原発で炉心が溶融するような重大事故が起きる可能性を認めながら、住民の避難などの防災計画は自治体任せで、審査の対象外にしていることです。川内原発の場合も自治体が作った計画に、住民からは実行不可能との声が上がっています。避難が難しい福祉施設などへの対策も未定です。重大事故を想定しながら避難計画もないというのは、無責任のきわみです。
再稼働強行の政権打倒を
川内原発の周辺住民だけでなく、全国から再稼働反対の声が相次いでいます。安全性が保証されたわけではなく、住民が同意しているわけでもないのに、規制委の審査が終わったからと原発を再稼働させるのは絶対に許されません。審査で合格したからと再稼働を急ぐ安倍政権の姿勢は、まさに国民への挑戦です。
安全を無視した危険な原発の再稼働を許さず「原発ゼロ」の日本を実現するために、「亡国」の安倍政権と対決し、内閣打倒に追い込む国民の運動がいよいよ重要です。