2014年7月17日(木)
日本共産党創立92周年記念講演会
「亡国の政治」と決別し、未来に責任を負う新しい政治を
志位委員長の講演
日本共産党の志位和夫委員長が15日、党創立92周年記念講演会で行った講演「『亡国の政治』と決別し、未来に責任を負う新しい政治を」(全文)は以下の通りです。
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参加されたみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。今日はようこそお越しくださいました。私からも心からのお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
安倍政権が発足して1年半がたちました。ここへきてその正体がはっきり見えてきました。この政権は、国会での多数を背景に、あらゆる分野で暴走しています。しかし、この暴走は、どれも彼らなりの先の見通しをもってやっているわけではありません。どれもが日本の未来、国民の未来に責任を負わない、「後は野となれ山となれ」のやみくもな暴走にほかなりません。一言でいえば、日本の国を亡ぼし、日本国民を亡ぼす「亡国の政治」――これこそが安倍政権の正体ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手) 党創立92周年の記念すべきこの日にあたって、日本共産党は、この「亡国の政治」と正面から対決し、どの分野でも日本の未来、国民の未来に責任を負う新しい政治への展望を指し示して、国民とともにたたかい抜く決意を表明するものです。(拍手)
今日は、「『亡国の政治』と決別し、未来に責任を負う新しい政治を」というテーマで、いくつかの角度からお話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いいたします。(拍手)
集団的自衛権――「海外で戦争する国」づくりを許さない
アメリカの戦争に、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事支援を行う
まず集団的自衛権の問題についてお話ししたいと思います。
安倍政権は、7月1日、国民多数の反対の声を踏みつけにして、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行しました。私は、まず、みなさんとともに、憲法9条を破壊するこの歴史的暴挙に断固抗議するとともに、「閣議決定」の撤回を強く要求するものであります。(拍手)
この「閣議決定」のどこが問題でしょうか。それは、「海外で戦争する国」づくりを、二つの道で推し進めるものとなっています。
第一は、アメリカが世界のどこであれ戦争に乗り出したさいに、自衛隊が「戦闘地域」までいって軍事支援を行うということです。
私は、5月28日の衆院予算委員会でこの問題を追及しました。2001年の米国によるアフガニスタン報復戦争、2003年の米国によるイラク侵略戦争にさいして、日本は自衛隊を派兵しました。しかし、どちらの場合も、派兵法の第2条で、「武力行使をしてはならない」「戦闘地域に行ってはならない」という二つの歯止めが明記されていました。当時の小泉純一郎首相はよく言っていました。「自衛隊を派遣するが、戦闘地域に行くんではありません。非戦闘地域にしか行きません。自衛隊のいるところが非戦闘地域なんです」。ここにはゴマカシがありましたが、一つの歯止めになったことも事実でした。自衛隊の実際の活動は、インド洋での給油活動、イラクでの給水活動や空輸活動にとどまりました。
私は、安倍晋三首相にただしました。「集団的自衛権の行使ができるとなれば、この二つの歯止めが外されてしまうのではないですか」。再三、ただしましたが、首相は歯止めを残すと言いませんでした。反対に自衛隊の活動を拡大する方向で、「従来のあり方を検討する」と答弁しました。自衛隊が「戦闘地域」に行くことを認めたのであります。
「閣議決定」には、そのことがあからさまな形で明記されました。自衛隊が活動する地域を「非戦闘地域」に限るという従来の枠組みを廃止し、これまで「戦闘地域」とされてきた場所であっても支援活動ができるとしたのです。
そうなったらどうなるか。「戦闘地域」での活動は、それがたとえ補給、輸送、医療などの「後方支援」であっても、相手からの攻撃を受けることになります。攻撃されたらどうなるか。わが党の笠井亮衆院議員と小池晃参院議員が連続追及しました(7月14日・衆院予算委員会、7月15日・参院予算委員会)。攻撃されたらどうするのか、わが党の追及に対して、首相は「逃げます」と答えました(笑い)。それではすまないでしょうとさらに追及されまして、「武器の使用はする」と、しぶしぶ認めました。結局、応戦し、武力行使となるのであります。
それが何をもたらすか。アフガン戦争にさいして、NATO(北大西洋条約機構)の国ぐには集団的自衛権を発動して参戦しました。NATOが決めた当初の活動内容は、「後方支援」ばかりだったのです。それでも泥沼の戦争に巻き込まれていきました。米国以外のNATO軍の犠牲者は、戦争開始から今日まで21カ国、1035人にのぼっています。
みなさん。安倍政権がやろうとしているのは、日本の国を守ることでも、国民の命を守ることでもありません。アメリカが起こすアフガン戦争やイラク戦争のような戦争で、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事活動ができるようにする、アメリカの戦争のために日本の若者の血を流す、これこそが正体だということを私は訴えたいと思うのであります。(拍手)
集団的自衛権――「自衛の措置」の名で海外での戦争にのりだす
第二は、「自衛の措置」という名目で、集団的自衛権行使容認に公然と踏み込んだということです。「閣議決定」は、日本に対する武力攻撃がなくても、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、武力の行使=集団的自衛権の行使ができるとしています。
それは一体どんな場合でしょうか。安倍首相が一つ覚えのように繰り返しているのは、「紛争時に邦人輸送をする米艦船の防護」であります。彼は、記者会見で、繰り返し、お母さんが赤ちゃんを抱っこしている絵の入った大きなパネルを使って、「助けなくていいのか」と熱弁をふるいました。しかし、緊急時の邦人の避難というのは、あくまでも日本政府の責任で行われるべきものです。1997年の日米ガイドラインの協議の場で、日本側は「米軍による邦人救出」を要請しましたが、米側から断られ、「日米両国政府は、自国の国民の退避は各々の責任で行う」ことが確認されています。だいたいアメリカの救出活動の特徴は、国籍による優先順位があることです。第1位はアメリカ国籍保持者、第2位はアメリカ永住権保持者、第3位はイギリス国民、第4位はカナダ国民、第5位はその他国民、日本人は最後のその他に入るのです。米軍は日本人を運んでくれないのです。現実にはありえないこんな例しか持ち出せない。これは、「国民の命を守る」という自らの言明がいかに空理空論であるかを、自ら証明するものではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
許し難いのは、安倍首相が、集団的自衛権行使容認という、「海外で戦争する国」への大転換に踏み出しながら、国民に事の真相を語らず、ウソとゴマカシに終始していることであります。私は、三つのウソとゴマカシということを指摘したいと思います。
一つは、首相が、「現行の憲法解釈の基本的考え方は、何も変わるところがない」としていることです。しかし、従来の政府の第9条に関するすべての見解は、「海外での武力行使は許されない」ことを土台として構築されてきました。集団的自衛権というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力行使をする=海外での武力行使をするということです。従来の憲法解釈の土台を百八十度覆しておきながら、「何も変わるところがない」とは、こんな厚顔無恥な詭弁(きべん)はないではありませんか(拍手)。しかも、首相は、先週、オーストラリアの連邦議会の演説で「日本は安全保障の法的基盤を一新しようとしている」と語りました。国内では「何も変わるところがない」といいながら、外国では「法的基盤を一新」と売り込む。このような国民を欺く二枚舌政治は、断じて許されるものではありません。(拍手)
二つは、首相が、集団的自衛権の行使は、「明確な歯止めがある」「限定的なもの」としていることです。これも悪質なゴマカシです。「明白な危険」があるかどうかを判断するのは誰か。時の政権ではありませんか。それは、首相が「政府が全ての情報を総合して判断する」と答弁したとおりであります。しかし、いざというときに国会で「その情報を明らかにせよ」といっても、「それは特定秘密です」ということになるでしょう。さらに、首相は、昨日(7月14日)、「石油の供給不足」や「日米関係に重大な影響」がある場合でも武力の行使がありうると答弁しました。結局、「歯止め」などどこにもないではないですか。国会にも国民にも真実が明らかにされないまま、時の政権の一存で海外の武力行使が底なしに広がるというのが、事の真相だということを私は言わなければなりません。(拍手)
三つは、首相が、「日本が戦争に巻き込まれることはあり得ない」としていることです。私は、1997年の国会で質問したことがあります(10月7日、衆院予算委員会)。「戦後、アメリカが世界各地でおこなった武力行使のなかで日本がそれに批判的立場をとったケースが一回でもありましたか」。当時の橋本龍太郎首相は、悔しそうに、こう答弁しました。「第二次世界大戦後、わが国が国連に加盟いたしまして以来、わが国は米国による武力行使にたいし国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません」。こんな国は、世界の主要国で日本しかありません。それでもアメリカの戦争に戦闘部隊を送ることがなかったのは、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という歯止めがあったからです。この歯止めをなくしてしまって、米国からの要求があった時にどうして断れるでしょうか。日本が、ベトナム戦争や、イラク戦争のような無法な侵略戦争に加担することになることは明らかではないでしょうか。(拍手)
1941年12月8日に発せられた太平洋戦争開戦の「詔書」には、次の言葉がありました。
「帝国ノ存立亦(また)正ニ危殆(きたい)ニ瀕セリ…帝国ハ今ヤ自存自衛ノ為蹶然(けつぜん)起ツテ一切ノ障礙(しょうがい)ヲ破碎(はさい)スルノ外ナキナリ」
無制限の海外での戦争を、「国の存立」「自衛の措置」の名で推し進めることは、かつて日本軍国主義が「帝国の存立」「自存自衛」の名で侵略戦争を進めた誤りを、ふたたび繰り返すものであり、断じて許すわけにはいきません。(大きな拍手)
戦後日本の国のあり方を根底から覆す――失われるものは何か
みなさん。こうした二つの道で「海外で戦争する国」づくりをめざす「閣議決定」は、戦後日本の国のあり方を、根底から覆そうというものにほかなりません。
戦後日本の政治は、その大部分が自民党政権によって担われてきました。それによる深刻なゆがみがあらゆる分野でつくりだされました。しかし、私は、そのもとでも、戦後日本の歴史のなかには、世界に誇っていい歴史もあると考えます。その最大のものは、日本国憲法第9条と、この条項を守り生かす国民のたたかいがつくりだした歴史ではないでしょうか。(拍手)
今年は、自衛隊創設からちょうど60年になります。この60年間、自衛隊は、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していません。これは歴代の自民党政権が立派だったからではありません。憲法9条の偉大な力ではないでしょうか(拍手)。憲法9条は自衛隊員の命をも守ってきたということを強調したいと思うのであります。(拍手)
安倍政権は、こうした戦後日本の国のあり方を根底から覆し、「殺し、殺される国」につくりかえようとしています。そのことによって失われるものは何でしょうか。私は、次の三つの点をあげなければなりません。
第一に、若者の命と人生が失われます。戦争がもたらす犠牲とはどのようなものか。自衛隊員の戦死者は一人もいないといいましたが、戦争の犠牲者がいないわけではありません。「非戦闘地域」への派遣が建前だったイラク派兵でも、迫撃砲やロケット弾による宿営地への攻撃は14回に及びました。緊張と恐怖から、派遣された隊員の1割から3割が精神に不調をきたしました。そしてアフガン派兵とあわせて帰国後40人の隊員が自ら命を絶っているのです。
これが「戦闘地域」への派兵、「殺し、殺される」状況に投げ込まれたらどうなるでしょう。米国にはイラク戦争とアフガニスタン戦争の帰還兵が200万人以上います。うち60万人が戦地で経験した戦闘や恐怖から心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患っています。そして米国政府の統計によると、何と1日平均22人が自殺をしています。戦場での戦死に加えて、年間8千人もの自殺です。これを日本の若者に押しつけようというのでしょうか。戦争でまっさきに犠牲とされるのは、未来ある若者です。若者を戦場に送るな――この声を突きつけようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
第二に、日本が憲法9条とともに築いてきた国際的信頼が失われます。「日本国際ボランティアセンター」(JVC)は、6月10日、声明を発表し、次のように訴えました。「先進主要国のほとんどがアフガニスタン本土に軍を派遣する中、日本だけは反政府武装勢力にも住民にも銃を向けることがありませんでした。これが、アフガニスタンにおいて日本が最も信頼される国と見なされてきた理由です」「政府の議論に欠けているのは、『失うもの』の大きさに対する認識です。これまで日本は、…非軍事に徹した国際平和協力を行ってきました。これは他国にできない日本の独自性であり、これにより日本が国際的な信頼を獲得してきたことは、まぎれもない事実です。…第二次世界大戦以降およそ70年間をかけて築き上げてきた資産や信頼を決して失ってはならないのです」。
世界の紛争地で、献身的にボランティア活動にとりくんできた多くのNGOから、日本が「海外で戦争する国」になったら、海外で他国民に銃を向けるようになったら、世界から日本に寄せられてきた信頼が憎悪に変わり、日本人がテロの対象とされ、「失うもの」はあまりに大きいという警告が発せられています。安倍政権はこの声を真剣に受け止めるべきだと、私は言いたいと思います。(拍手)
第三に、日本社会から人権と民主主義が失われます。「海外で戦争する国」づくりは、戦争に国民を動員する体制づくりと一体のものであります。秘密保護法は、その重大な一歩でした。改悪教育基本法にそって、子どもたちに「愛国心」を押しつける動きも重大であります。
この点にかかわって、私は、徴兵制の問題に触れないわけにいきません。「自衛隊に犠牲者が出れば、自衛隊員が激減し、徴兵制になりかねない」――多くの識者の懸念は、決して杞憂(きゆう)とはいえません。政府は、これまで徴兵制について、憲法18条が禁止する「奴隷的苦役」にあたり許されないとしてきました。しかし、自民党の石破茂幹事長は、国会の発言で、つぎのようにのべています。「国を守ることが意に反した奴隷的な苦役だというような国は、国家の名に値しない。徴兵制が奴隷的な苦役だとする議論にはどうしても賛成しかねる」(2002年5月23日、衆院憲法調査会・基本的人権の保障に関する調査小委員会)。憲法の根幹をなす9条の解釈さえ勝手に変更する勢力が、憲法18条の解釈を変更しないと、いったい誰が保証できるでしょうか。
秘密保護法、「愛国心」の押しつけ、そして徴兵制――国民を無理やり戦争に動員するあらゆる企てを、きっぱり拒否しようではありませんか。(大きな拍手)
何のためにこんな暴走をしているのか――根本に安倍首相自身の反動的野望
ここで疑問がでてきます。それにしても何のために、安倍首相はこんなとんでもない暴走をしているのか。
根底には、日米軍事同盟を侵略的に強化しようという日米支配勢力の思惑が働いていることは間違いありません。しかし、それだけでは説明がつきません。公明党の会議で「なぜそんなに拙速に進めるのか」と質問する公明党議員に、北側一雄副代表はこう返したそうです。「安倍首相が急いでいるんだ」(笑い)。答えになっていませんが(笑い)。安倍首相の異常な性急さ、乱暴さの根本には、安倍首相自身の反動的野望があるということを、私は指摘しなければなりません。
首相は、『この国を守る決意』(2004年、扶桑社)という著書で、彼の祖父・岸信介首相について、60年安保改定を「断固としてやり抜いた」「祖父の世代は祖父の世代の責任を果たした」と礼賛しています。そして、「われわれには新たな責任がある。それは、日米安保条約を堂々たる双務性にしていくことだ」「軍事同盟というのは、“血の同盟”です。…今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊はアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない。…それでは完全なイコールパートナーとは言えない」とのべて、集団的自衛権の行使を説いています。
つまり、安倍首相の行動というのは、日本の安全や世界の平和という目的から出発したものでは決してないのです。自分の祖父に続く「日本のリーダー」として歴史にその名を刻みたい、そうした自らの野望の実現のために、「海外で戦争する国」に突き進んでいるのであります。
しかし、それによって失うものははかり知れないではありませんか。若者の命を危険にさらし、日本の国際的信頼を投げ捨て、人権も民主主義も破壊する――これは文字通りの「亡国の政治」そのものではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
たたかいの帰すうを決めるのは世論と運動――空前の国民的反撃を
みなさん。安倍政権のたくらみは危険ですが、大局で見れば、決して思惑通りに進んでいるわけではありません。
彼らはまず、憲法9条の明文改憲を狙いましたが、改憲反対が国民世論の多数を占め、うまく進みませんでした。そこでつぎに憲法96条の改憲手続きを緩和しようとしましたが、今度は憲法9条改定の是非を超えて「邪道だ」という声が起こり頓挫しました。そこで解釈改憲で集団的自衛権行使容認を進めようとしていますが、保守政治を中枢で支えてきた人々を含めて「こんな裏口入学は許せない」「立憲主義の否定だ」との批判が広がっています。暴走の一歩一歩が、新たな人々の批判を広げています。各メディアの世論調査では、どれも5割から6割の国民が反対の声をあげているではありませんか。大局で見れば、追いつめられているのは、安倍政権の側ではないでしょうか。(拍手)
平和を願う国民のエネルギーは広く深いものがあると感じます。6月30日と7月1日の官邸前行動には、連日、数万人の人々が参加し、「海外で戦争する国」づくりに反対する抗議の国民的エネルギーを目に見える形で示しました。若い世代が、「最大の被害者となるのは私たちだ」と、この問題を文字通り自らの問題としてとらえ、たたかいの主人公となっているのは素晴らしいことであります(拍手)。子育て世代は、「子どもたちが戦争に巻き込まれるのではないかと不安だ。私たちの責任で平和憲法を子どもたちの世代に引き渡したい」と声をあげています。高齢者世代は、「あの悲惨な戦争を、孫の世代に体験させるわけには絶対にいかない」と立ち上がっています。
日本弁護士連合会と全国各地の52の弁護士会のすべてで反対声明が採択されています。日本の弁護士全員が加入する弁護士会が、弁護士法第1条の「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」との使命に燃えて、立憲主義を守り、恒久平和主義を求めて、たたかいの先頭に立っていることは、心強い限りであります。(拍手)
宗教者の批判の広がりも目覚ましいものがあります。日本の伝統仏教界における唯一の連合組織で、主要な59の宗派、36の都道府県仏教会、10の仏教団体、合計105団体が加盟する全日本仏教会は、つぎのような談話を発表しました。「仏陀(ぶっだ)の『和の精神』を仰ぐ者として、このたびの集団的自衛権の行使を容認する閣議決定には、人間の知恵の『闇』を垣間見るがごとき、深い憂慮と危惧の念を禁じ得ません」。
自民党の歴代元幹事長、改憲派といわれてきた憲法学者が、つぎつぎと「しんぶん赤旗」に登場し、反対の論陣を張っています。「日経ビジネス」電子版コラム(5月16日)は、「行く手に翻るのは赤い旗のみか?」(笑い)と題して次のように書きました。「安倍政権が発足して以来、日本共産党の機関紙である『赤旗』のインタビュー欄に、保守系の論客や、自民党の元重鎮が登場するケースが目立つようになっている。これは、普通に考えれば赤旗編集部内に優秀な交渉役がいるということなのだろうが(笑い)、それだけでもないはずだ。保守系の論客と見なされている人々が、次々と赤旗のインタビューに応じている背景には、安倍政権に対して、真正面から反論する場を提供してくれる媒体が、もはや赤旗ぐらいしか残っていないことを示唆している」(拍手)。かつての論争の相手が、いまでは共同の相手に変わっています。そして、「しんぶん赤旗」が日本の理性と良心のよりどころになっているのは、ほんとうにうれしいことであります。(拍手)
みなさん。「閣議決定」が強行されたからといって、自衛隊を動かせるわけでは決してありません。たたかいはこれからです。日本共産党は、憲法違反の「閣議決定」の撤回を強く求めるとともに、「閣議決定」を具体化し、「海外で戦争する国」をめざすいっさいの立法作業をただちに中止することを強く要求するものであります。(拍手)
日本は今、戦争か平和かをめぐって、戦後最大の歴史的岐路を迎えています。このたたかいの最終的な帰趨(きすう)を決めるのは、国民の世論と運動であります。「海外で戦争する国」づくりを許すな、解釈で憲法を壊すな――この一点で、空前の国民的反撃のたたかいをおこし、安倍政権の軍国主義復活の野望を必ず打ち砕くために、ともに力をあわせようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
北東アジアの平和と安定をどうはかるか――「北東アジア平和協力構想」
この問題の最後に、北東アジアの平和と安定をどうはかるかについての日本共産党の考えをお話ししたいと思います。
安倍首相は、ことあるごとに「我が国を取り巻く安全保障環境が悪化している」と言い募り、集団的自衛権行使容認の口実にしています。第1次安倍政権のときにも、「環境が悪化している」と言ったものでした。彼が登場すると「環境が悪化」する。(笑い)
北東アジアには緊張と紛争の火種が存在することは事実です。しかし、首相のように専ら「抑止力」の強化、軍事力増強で構えたらどうなるでしょう。相手も軍事力増強を加速することになります。そうなれば、「軍事対軍事」の悪循環に陥ってしまうではありませんか。いま日本にとって何よりも大切なことは、どんな問題も、道理に立った外交交渉による解決、平和的解決に徹する、憲法9条の精神に立った外交戦略を確立することではないでしょうか。(拍手)
日本共産党は、今年1月の第26回党大会で、次の四つの目標と原則に立った「北東アジア平和協力構想」を提唱しました。
第一に、域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結しよう。
第二に、北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、この枠組みを地域の平和と安定の枠組みに発展させよう。
第三に、領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぼう。
第四に、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。
この4点ですが、これは決して理想論ではありません。机上の議論でもありません。この間、私たちは、東南アジアを訪問して、ASEAN(東南アジア諸国連合)の国ぐにの取り組みをじかに見てまいりました。ASEANでは、「東南アジア友好協力条約」(TAC)といいまして、「紛争の対話による解決」をめざす平和の地域共同の枠組みがしっかりつくられています。インドネシアのジャカルタにあるASEAN本部を訪問して話を聞きますと、「ASEANでは年間1000回もの会合をやっています。あらゆるレベルで対話と信頼醸成をはかっています。だからこの地域にもいろいろな紛争問題があるけれども戦争になりません。何でも話し合いで解決します。それを実践しています」。こういう説明でした。東南アジアで現につくられている平和の枠組みを、北東アジアにも築こうではないかというのが、日本共産党の提案であります。(拍手)
私たちは、この提案をもって内外の人々と懇談を重ねてまいりました。ある国の大使は、私たちの提案に対して次のように答えてくれました。「全面的に共感します。志位委員長がいわれた構想通りになれば、真の意味での北東アジアの平和と協力の枠組みとなります。だから一刻も早く、日本共産党に政権をとっていただき、ぜひこの構想を実現していただきたい」(拍手)。うれしい期待であります。
元外務省高官の一人は、次のような感想を寄せてくれました。「極めて正論で、当然支持を得られるべきです。日本と中国、韓国も入れて、どういう東アジアをつくるのか、その議論を始めましょう。角を突き合わせていがみ合う東アジアではなく、平和でむつみ合い誠実に、相手に対して寛容な、そういうものがいきわたる東アジアをつくりたい」。
みなさん。日本共産党の「北東アジア平和協力構想」こそ、地域の平和と安定を守り、未来に真に責任を負う提案ではないでしょうか。(拍手)
日本共産党は、野党であっても憲法9条を生かした自主自立の野党外交で世界とアジアの平和のために力を尽くしていますが、私たちの野党外交の方針が、一日も早く、日本政府の外交方針になる日が訪れるように、みなさんのお力添えを訴えるものであります。(大きな拍手)
暮らし破壊の「逆立ち」経済を大本からただそう
消費税大増税――国民に説明がつかない“3重の「逆立ち」税制”
つぎに暮らしと経済についてお話ししたいと思います。
安倍首相は、通常国会閉会後の記者会見で、「この国会は、まさしく好循環実現国会でありました」「企業の収益が雇用の拡大や所得の上昇につながり、まさに経済の好循環が生まれようとしています」と自画自賛しました。しかし、「経済の好循環」なるものは、現実にはどこにも存在しておりません。首相の頭のなかにだけ(笑い)存在する、「幻」にすぎません。
4月から消費税大増税が強行されました。8%への引き上げで8兆円もの負担増です。家計がどうなっているか。私が最も重大だと思うのは、労働者の実質賃金が、4月に前年比マイナス3・4%、5月にマイナス3・6%と大幅に減少したことです。賃金が上がらないのに、円安によって物価だけ上がり、消費税増税が追い打ちをかけた結果であります。調べてみますと、4、5月としては、この20年来、最大の落ち込みであります。ところが政府は、増税後の景気動向を「想定内」だと言い張っています。実質賃金の下落、購買力の低下を、「想定内」だとするのは、暮らしと経済に責任を負うべき政府が決して口にすべきことではないのではないでしょうか。(拍手)
みなさん。今回の消費税大増税ほど、国民に説明のつかない、道理のたたないものはありません。私は、これは“3重の「逆立ち」税制”だということを告発したい。
第一の「逆立ち」は、「社会保障のため」といって消費税増税を強行しながら、悪名高い社会保障給付の「自然増削減」の方針を復活させたということです。安倍政権が6月に決定した「骨太の方針」というのがあります。国民の“骨身を削る”方針です。この方針で、「社会保障給付について、…『自然増』も含め聖域なく見直す」ことが明記されました。それが何をもたらすか。国民のみなさんは散々な体験をされていると思います。かつて小泉内閣は、「構造改革」の名で社会保障費の「自然増」を毎年2200億円削減する方針を掲げ、日本の社会保障をボロボロにしてしまいました。そして、さすがの自民党もこれを「諸悪の根源」と認め、麻生内閣のもとでこの方針は撤回されたのであります。それを臆面もなく復活させる。しかも国民には大増税を押しつけながら復活させる。こんな無反省・無責任な政治はないではありませんか。(拍手)
第二の「逆立ち」は、「財政再建のため」といって消費税増税を強行しながら、大企業には大減税の大盤振る舞いが行われていることです。今年度、大企業には、復興特別法人税の廃止、投資減税など、1・5兆円もの減税がばらまかれました。さらに「骨太の方針」には、法人税率の引き下げが明記されました。財界が求める法人税率10%引き下げを実行したら、5兆円もの大減税になります。「社会保障のため」「財政再建のため」といって消費税を増税しておいて、それを大企業減税に使うとは、これは国家的詐欺に等しいやり方だといわねばなりません。(大きな拍手)
そして第三の「逆立ち」は、その大企業減税の財源のためとして、「外形標準課税」の拡大など、赤字で苦しむ中小企業からも税金を取り立てようとしていることであります。中小企業は、日本の雇用の7割を支えています。少なくとも12兆円にのぼる社会保険料を負担しています。中小企業が従業員へ支払う賃金から発生する所得税は約3兆円にのぼります。日本経済の根幹を支えているのは中小企業ではありませんか。大企業減税の財源のために、この根幹を犠牲にして恥じないというのは、「逆立ち」税制ここにきわまれりというほかありません。(拍手)
みなさん。消費税大増税はどこから見ても道理のかけらもありません。消費税大増税ストップの声を突きつけようではありませんか(拍手)。来年のいっせい地方選挙では、日本共産党の躍進で、増税勢力に国民の怒りの審判をくだそうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
株価のためなら何でもあり――「後は野となれ山となれ」の政治でいいのか
それでは安倍政権が「成長戦略」の名でやろうとしていることは何でしょうか。これはおよそ経済政策の名に値するものではありません。
一言でいって、政権を維持するために、株価を引き上げることの一点を目的とし、そのためならば何でもあり――これがその中身です。官邸の安倍首相の執務室には「株価ボード」なるものが設置されているといいます。日々の株価に一喜一憂する「株価連動政権」(笑い)。これが「アベノミクス」なるものの正体であります。
安倍首相は、今年5月、イギリス・ロンドンの金融センター、シティで行ったスピーチで、外国人投資家を前に、つぎの三つのことを約束し、「日本株を買ってください」と訴えました。
一つは、「法人税の改革を、一層進めます」。“法人税を引き下げます、そうすれば企業の利益が増え、株主への配当が増え、株価が上がります。どうか日本株を買ってください”というわけです。財政危機だと国民には消費税増税を強いながら、さらに中小企業に新たな増税計画を押しつけながら、法人税大減税を世界に約束したのです。それによって税収に穴があき、財政危機がさらにひどくなってもお構いなしというわけであります。
二つは、「世界最大の年金基金の改革を進めていきます」。“日本の公的年金の積立金は130兆円にのぼりますが、この巨額の資金を使って日本株を買い増します。政府が買うのですから確実に株価は上がります。どうか日本株を買ってください”というわけです。しかし、国民の虎の子の年金積立金を株に投じるということは、それを大きなリスクにさらすことにほかなりません。金融大国アメリカでさえ公的年金の積立金で株を買うことはしていません。文字通りの禁じ手を使ってまで株価を引き上げようというのは許すわけにいかないということを、私は訴えたいのであります。(拍手)
三つは、「労働の制度は、新しい時代の新しい働き方に合わせ、見直しを進めます」。“残業代はゼロにしましょう、派遣労働への規制はすべて取り払いましょう、そうすれば企業の利益は確実に上がり、株価は上がります。どうか日本株を買ってください”というわけです。そのことによる長時間労働で「過労死」が増えようと、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」社会になろうと、知ったことではないというわけであります。とんでもないではありませんか。(「その通り」の声、拍手)
株価のためなら、庶民や中小企業が重税に苦しもうと、国の財政がどうなろうと、年金がどうなろうと、雇用がどうなろうと、「後は野となれ山となれ」。さらに株価引き上げ以外のメニューを見ますと、日本の食と農を破壊するTPP(環太平洋連携協定)の推進、原発再稼働、原発輸出、武器輸出、そしてカジノ賭博解禁です。これが「成長戦略」というのですから聞いてあきれるではありませんか(拍手)。ここには、まっとうなものは一つもありません。国民の命と暮らしを守るという立場はかけらもないではありませんか。
暮らし破壊の「逆立ち」経済、文字通りの「亡国の政治」というほかないではありませんか。(拍手)
安倍政権に、もはや日本経済のかじ取りする資格なしということを、私はいいたいと思います。(大きな拍手)
正されるべき日本経済の病理はどこにあるのか――日本共産党の提案
みなさん。それでは本当に正されるべき日本経済の病理はどこにあるでしょうか。
大企業のもうけがいったいどこにまわっているのか、この1年間の動きについて調べてみました。2013年度の決算を集計してみますと、上位500社で見て、利益は1年間で12兆円から22兆円へと2倍近くに急増しています。この利益がどこにまわったか。1人あたりの役員報酬は11%増と大幅アップしています。株主への配当金総額は20%増と大幅アップしています。ところが正社員に払われた給与総額はわずか1%しか増えていません。その一方で、500社の大企業の内部留保は、1年間で20兆円も増えました。
大企業の利益が増えても、そのお金は、株主への配当、役員報酬の引き上げ、そして内部留保に積まれてしまい、労働者の賃金には少しもまわらない。ここにこそ、メスを入れるべき日本経済の一番の病理があるということを私は訴えたいと思います。(拍手)
そういう診断が明瞭になれば、処方箋もおのずから明らかになるのではないでしょうか。私は、この日本経済の病理を正し、日本経済を再生させるために、二つの改革を提唱したいと思います。
第一は、税金は負担能力に応じてという「応能負担」の原則に立った税制改革を進めることであります。
トヨタ自動車が、2008年度から12年度までの5年間、法人税ゼロだったということが話題になりましたが、大企業の法人税負担率はさまざまな優遇税制のおかげでたいへんに低いのです。500社の集計をやってみますと、法人税負担率はわずか24%にすぎません。政府・財界は、口を開けば、日本の法人税実効税率は35%で諸外国に比べて高いから、「20%台をめざす」といいますが、実際はもう少しで20%台を割り込むところまで税負担率は下がっているのです。
みなさん。増税するなら、巨額の株の配当などで潤っている富裕層、そして巨額の利益をあげている大企業への優遇税制をただし、もうけ相応の税金を払ってもらおうではありませんか。(拍手)
第二は、大企業の内部留保を、日本経済に還流させ、国民の所得を増やす経済改革に取り組むことです。
日本共産党は、これまで、大企業の内部留保の1%を取り崩すだけで、「月1万円以上」の賃上げが可能だと主張してきました。しかし、いまや多くの大企業は賃上げのために内部留保を取り崩す必要すらありません。この1年間で増えた内部留保――20兆円の一部を使うだけでも、大幅賃上げは可能になります。全労連は、消費税増税による「賃下げ効果」も考慮し、「月1万6000円以上」の賃上げを要求していますが、これは、この1年間で増えた内部留保のわずか2割程度を使えば実現します。
みなさん。大企業の巨額の内部留保を活用して、すべての労働者の大幅賃上げを実現しようではありませんか。(拍手)
労働者派遣法を抜本改正して、「雇用は正社員が当たり前の社会」をご一緒につくろうではありませんか。(拍手)
「過労死」を生む長時間・過密労働を是正して、安定した雇用を増やそうではありませんか。(拍手)
中小企業への手当てをしっかり行いながら最低賃金を時給千円以上に引き上げ、この日本から「働く貧困層」をなくしていこうではありませんか。(拍手)
若者を使いつぶす「ブラック企業」を厳しく規制しましょう。(拍手)
中小企業と大企業の公正な取引のルールをつくり、適正な単価を実現させようではありませんか。(拍手)
ここにこそ、国民の暮らし第一で日本経済再生をはかる大道があります。
私は、日本共産党が示す改革こそ、日本経済の病理を正し、未来に責任を負う唯一の方策であると確信するものであります。(拍手)
みなさん。その実現のためにともにたたかおうではありませんか。(大きな拍手)
原発再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」への道を開こう
被災地切り捨て政治は許せない――「オール福島」の声に連帯してたたかう
つぎに原発の問題についてお話ししたいと思います。
安倍政権は、原発を永久に使い続ける「エネルギー基本計画」を決定し、原発再稼働への暴走を行っています。まず私が強調したいのは、この暴走が、被災地・福島の願いに真っ向から背くものだということであります。
東日本大震災と原発事故から3年4カ月。いまだに13万人もの県民のみなさんが先の見えない避難生活を余儀なくされておられます。福島県の調査によりますと、県内外に避難されている家族の49%が2カ所以上に離れ離れになって暮らさなければならなくなっています。避難後心身の不調を訴えるようになった人がいる世帯は68%に達しています。「震災関連死」は1700人を超えて増え続けています。
にもかかわらず安倍政権の姿勢はどうでしょうか。原発再稼働や輸出に向けた環境づくりのために、収束も、賠償も、除染も「終わったことにしよう」――これがその姿勢ではありませんか。
福島原発では汚染水問題がますます深刻になっています。地下水をくみ上げて海に放出する地下水バイパスを行っていますが、くみ上げ用井戸1カ所で放射性トリチウムの上昇が続き、基準値を上回りました。ところが東電は、汚染地下水を他の地下水と混ぜて、基準値を下回ったとして、海への放出を続けています。「薄めれば捨ててよい」ということが許されるなら、およそ海への放射能汚染水の放出は天下御免になります。こんな無責任な姿勢を許すわけにはまいりません。(「そうだ」の声、拍手)
避難指示を解除し、住民が戻ろうが戻るまいが、1年後に避難にかかわる賠償を打ち切るという避難者切り捨て政策が始まっています。除染についても、従来の目標である「年間追加線量1ミリシーベルト以下」を引き上げて、事実上「除染は終わり」という状況を広げようとしています。
そして石原伸晃環境大臣の「最後は金目でしょ」の発言です。地元紙「福島民報」は、「『金など要らない。古里を返せ(拍手)、元の暮らしを返せ』この心の叫びが国には聞こえないのか」と厳しく批判しました。この発言は単なる「失言」ではなく、安倍政権の被災地切り捨て政策の本性が露呈したものとして、断じて許すわけにはいきません。(大きな拍手)
「収束宣言を撤回し、住み続けられる福島に戻せ」「福島原発の全基廃炉を決断せよ」「徹底した除染と完全賠償を行え」――日本共産党は、「オール福島」のこの声に固く連帯し、福島復興のために最後まで力をつくす決意を表明するものです。(大きな拍手)
原発再稼働差し止めの福井地裁判決の歴史的意義
原発再稼働に突き進む安倍政権に痛打を与える画期的な出来事が起こりました。5月21日、福井地裁は、関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる歴史的判決を下しました(拍手)。私は、判決文を、何度も読みましたが、福島原発事故から真摯(しんし)に教訓を引き出し、誰もが納得できる、簡単には覆すことのできない太い論理に貫かれています。私は、とくに四つの点に深い感動を覚えました。
第一は、この判決が、憲法で保障された「人格権」を最優先していることです。
判決では、「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益」の全体を「人格権」とよび、人格権は憲法上の権利であって、日本の法律のもとでは「これを超える価値を他に見出(いだ)すことはできない」と宣言しています。「人格権はもっとも尊い権利なのだ」と天下に宣言したのです。そして原発の運転によって、この「根源的な権利が極めて広汎に奪われる」という事態を招く「具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然である」として、運転差し止めを命じたのであります。(拍手)
ひらたく言いますと、“国民の命と暮らしを守ること以上に大切なことはない”という当たり前の大原則にたって、原発再稼働ストップの判定を下したのであります。(拍手)
第二は、この判決が、原発の他の技術とは異なる「本質的な危険性」を繰り返し強調していることです。
判決は、「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる」と指摘し、次のように述べています。「原子力発電においては、…いったん発生した事故は時の経過に従って拡大して行くという性質を持つ。このことは、(他の技術とは)異なる原子力発電に内在する本質的な危険である」。他の技術の場合には、仮に大事故が起こっても時とともに収束に向かいます。ところが原発は違う。ひとたび大事故が起こったら、時とともに事故の被害は拡大していきます。
日本共産党は、原発は他の技術にはない「異質の危険」を持っている、ひとたび大事故が起こったら、被害は空間的にも時間的にもとめどもなく広がる、だから人類と原発は共存できないと主張してきましたが、同じ論理が司法によって下されたことはたいへんに重要なことだと考えるものであります。(拍手)
第三は、判決が、原発「安全神話」に対して厳しい断罪を下したということです。
関西電力は、訴訟の中で、基準地震動――想定される最大の地震の揺れ――を超える地震が到来することはまず考えられないと主張しました。それに対して判決は、「全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視すべき」だと一蹴し、つぎのように述べました。
「この地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない」
原発「安全神話」に対して、司法による峻烈(しゅんれつ)な断罪が下されたのであります。(拍手)
第四に、判決は、国民の安全よりもコストを優先する考え方をきっぱりと退けました。一番最後の部分なのですが、判決のなかでも特に感動的な部分であります。判決は、こう述べています。
「被告(関電)は、原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている」(拍手)
多数の人々の命と電気代の高い低いの問題は、次元を異にする問題であって、天秤(てんびん)にかけること自体、「法的には許されない」。素晴らしいですね。(「その通り」の声、拍手)
さらに判決は、日本の国の国富――国の富とは何かについて深い考察を示しました。
「このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ…原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」(拍手)
くわえて判決は、地球温暖化対策を理由にした原発推進論に対して、次のように一刀両断の批判をくわえています。
「被告(関電)は、原子力発電所の稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」(大きな拍手)
これらはみんな、私が言っているのではありませんよ(笑い)。司法の判断なのです。(拍手)
みなさん。この四つの判断は、大飯原発だけでなく、全国すべての原発にあてはまるものではないでしょうか。(拍手)
私は、安倍政権がこの判決を重く受け止めて、全国すべての原発の再稼働を断念することを強く求めるものであります。(大きな拍手)
それにしても、こうした事実と道理に立った理性的判決がなぜ生まれたか。根本には国民の世論と運動があると思います。
官邸前で、全国各地で、粘り強く続けられた「再稼働反対・原発ゼロ」の運動が、司法への不当な圧力をとりはらい、司法をよみがえらせた。司法が本来の「法と正義」に基づく理性的判決を下すことを可能にしたのではないでしょうか(拍手)。その点ではこの判決は、国民のたたかいが勝ち取った判決ともいえるのではないでしょうか(拍手)。これをみんなの確信にして、国民のたたかいで「原発ゼロの日本」への道を開こうではありませんか。がんばりましょう。(大きな拍手)
米軍新基地建設ストップ、基地のない平和な沖縄を
「銃剣とブルドーザー」による土地強奪の再現――この暴挙は許せない
つぎに沖縄の米軍基地問題について訴えたいと思います。
安倍政権は、7月1日、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を強行したその日に、もう一つの暴挙を開始しました。沖縄県名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内で、米軍新基地建設の工事に着工したのであります。政府は、7月中にも、埋め立て工事に向けた海底ボーリング調査を強行しようとしています。
地元紙はそろって、政府の動きを、60年前、「銃剣とブルドーザー」で住民を追い出し、家に火を放ってなぎ倒し、土地を強奪して基地を拡大した蛮行とうり二つだと糾弾しました。県民の7割以上が反対し、稲嶺進名護市長も断固反対しているなかで、この声を一顧だにせず強行する姿勢は、およそ民主主義国家とはいえません(拍手)。みなさん。ここでも「亡国の政治」がむき出しになっているではありませんか。(拍手)
この間、安倍政権は強圧をもって、沖縄県選出の自民党国会議員と自民党県連に「県外移設」の公約を裏切らせ、仲井真弘多知事を裏切らせ、新基地建設を容認させました。しかし、裏切りは許せないとの声がわきおこり、「オール沖縄」はいよいよ結束を固めつつあります。新基地建設の現場では、海上デモ、反対集会、座り込みなど、粘り強いたたかいが日夜進められています。
私は、言いたい。どんな強圧をもってしても沖縄県民を屈服させることは不可能だということを政府は思い知るべきであります。(「そうだ」の声、大きな拍手)
沖縄「建白書」こそ団結の要――保守・革新の枠組みをこえ島ぐるみのたたかいを
「オール沖縄」の団結の要となっているのは、オスプレイ配備撤回、普天間基地閉鎖・撤去、県内移設断念を求める2013年1月の沖縄「建白書」であります。沖縄の全41市町村長、議会議長、県議会と、主要な経済的、社会的団体の代表が直筆で署名し、連名で提出したこの歴史的文書にこそ、「オール沖縄」の総意が込められています。一部の勢力が裏切り、脱落しても、「オール沖縄」のこの総意はみじんも揺らぐことはありません。反対に、これまでの保守・革新の枠組みを超えて、文字通りの島ぐるみのたたかいが力強く前進しています。
「沖縄『建白書』を実現し未来を拓(ひら)く島ぐるみ会議」が立ち上げられ、7月末には結成総会が予定されています。すでに「島ぐるみ会議」の呼びかけに呼応して、日本共産党から自民党の那覇市議団まで、超党派で県議・市町村議130人が参加し、議員団会議が発足しています。県の経済界の中からも、「基地頼みでは沖縄の未来はない」「裏切りは許せない」と「建白書」実現をめざす動きが起こっています。
60年前の「銃剣とブルドーザー」による土地強奪の暴挙は、島ぐるみの本土復帰闘争を呼び起こしました。本土でも全国各地で沖縄の復帰闘争を支持し連帯するたたかいがわきおこりました。それは乗り越えることが不可能にも見えた壁を乗り越え、本土復帰へと実を結んでいきました。今回の安倍政権による、県民の総意を踏みつけにした暴政もまた、島ぐるみのたたかいの巨大な発展を呼び起こさずにはおかないでありましょう。「沖縄は断じて屈しない」――沖縄県民のこの決意に、全国が応えようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
日本共産党は、名護市辺野古への新基地建設に断固反対するとともに、普天間基地の無条件撤去、基地のない平和な沖縄をめざして、最後までたたかいぬく決意を表明するものです。(拍手)
みなさん。11月に行われる沖縄県知事選挙は、県民を裏切って新基地建設を進める勢力と、「建白書」の実現をめざす「オール沖縄」の勢力とのたたかいとなるでしょう。この歴史的なたたかいに必ず勝利するために、全国のみなさんの支援を集中することを心からよびかけるものであります。(大きな拍手)
安倍政権打倒の国民的大運動をよびかける
みなさん。集団的自衛権、暮らしと経済、原発、米軍基地――四つの問題を見てきましたが、安倍政権がやっていることは、どの分野でも、日本の国を亡ぼし、日本国民を亡ぼす、文字通りの「亡国の政治」ではないでしょうか。
安倍政権は、歴代自民党政権のなかでも、戦後最悪の反動政権と言わなければなりません。(「そうだ」「その通り」の声、大きな拍手)
このような内閣は、1日続けば、その分だけ、日本と国民に災いをもたらすことになることは、もはや明らかではないでしょうか。(大きな拍手)
私は、心からよびかけたい。安倍政権打倒の国民的大運動を起こそうではありませんか。(歓声、長く続く大きな拍手)
日本共産党は、このたたかいの先頭に立つとともに、国政の緊急の四つの転換を強く求めてたたかいます。
第一は、「海外で戦争する国」づくりを中止し、憲法9条を生かした平和日本に転換することであります。(拍手)
第二は、暮らし破壊の「逆立ち」経済を正し、暮らし第一で日本経済を再生することであります。(拍手)
第三は、原発再稼働をストップし、「原発ゼロの日本」に転換することであります。(拍手)
第四は、米軍新基地建設をストップし、基地のない平和な沖縄を実現することであります。(拍手)
みなさん。それぞれの分野で、一致点にもとづく共闘――「一点共闘」を広げに広げ、それを安倍政権打倒の国民的大運動へと大合流させようではありませんか(大きな拍手)。みんなの力で安倍政権を打ち倒そうではありませんか。(「おう」「そうだ」の声、歓声、鳴りやまない大きな拍手)
未来に責任を負う党――日本共産党を強く大きく
綱領――未来への確かな羅針盤を持つ党
みなさん。日本共産党こそ、未来に責任を負う政党です。最後に私は、この党の特質を、三つの角度から訴えたいと思います。
第一は、日本共産党が、綱領という未来への確かな羅針盤を持っているということです。
私たちの綱領では、日本の政治のあらゆる問題の根源に、「アメリカいいなり」「財界中心」という二つの異常なゆがみがあることを明らかにし、このゆがみをただし「国民こそ主人公」の新しい日本への改革の展望を指し示しています。私たちが、今日お話ししたように、外交でも、経済でも、安倍政権の暴走に正面から対決するとともに、国民の立場にたった具体的で建設的な対案を示すことができる根本には、綱領の力があるということを強調したいと思うのであります。(拍手)
さらに私たちの綱領は、人類の歴史は資本主義で終わりでない、この矛盾に満ちた社会をのりこえて未来社会――社会主義・共産主義社会に進むという展望を明らかにしています。その未来像の特質は、一言で言えば、人間の自由、人間の解放であります。私たちの党は、資本主義で世の中が終わりと思っている政党とは違うんです。ましてや日々の目先の株価にしか(笑い)関心のない安倍政権とは違うんです(「そうだ」「違う」の声、拍手)。壮大な人類史的視野をもった政党が、日本共産党であります(拍手)。日本共産党という党名は、私たちのこの理想とかたく結びついた名前であり、これからも大切に使っていきたいということを申し上げたいと思います。(拍手)
歴史――確かな歴史を持つ党でこそ、未来を拓く先頭に立てる
第二に、日本共産党は、ちょうど今日で党をつくって92年になりますが、確かな歴史を持つ党でこそ、未来を拓く先頭に立てるということを私は訴えたいと思います。
かつて日本が、戦争か平和かの歴史的岐路に立ったとき、政党の真価が厳しく試されました。1931年9月18日、日本軍国主義が中国侵略戦争を開始したとき、これに敢然と反対の旗を掲げて立ち向かった政党は、日本共産党だけでありました。(拍手)
今日ここに持ってまいりましたが、これは戦争が開始された翌日の9月19日、日本共産党が発表した声明です。次のようによびかけています。
「日本帝国主義の満蒙侵略を撃退せよ! 奉天並びに一切の占領地から、即時軍隊を撤退せよ! 中国満州に於ける日本軍隊軍艦の即時撤退! 一人の兵士も戦線に送るな!」。(拍手)
それから日本敗戦までの15年間、日本共産党は、多くの先輩たちを弾圧で失いながらも、反戦平和の旗を不屈に掲げ続けました。(拍手)
このとき、他の政党はどうだったか。日本共産党以外の各政党――自民党の前身の民政党や政友会、社会党の前身の社会民衆党は、積極的に侵略戦争を支持しました。政友会は、議員総会で、「満州事変は在満同胞の保護と既得権益の擁護とを基調とする自衛権の発動」であり「断じて撤兵を許さず」と決議しました。何やら安倍首相と同じようなセリフが(笑い)並んでいるではありませんか。これらの諸党は、太平洋戦争を前にして党を解散し、「大政翼賛会」に合流して侵略戦争を推進しました。
どの党が日本の未来に真に責任を負う党だったか。すでに歴史の審判ははっきり下っているのではないでしょうか。(拍手)
みなさん。今再び、日本は、戦争か平和かの歴史的岐路に立っています。
「日本を取り戻す」という名で、歴史を偽造し、「戦前を取り戻そう」という勢力に決して負けるわけにはいきません。(「そうだ」の声、大きな拍手)
日本共産党は、92年の歴史で、反戦平和を一筋につらぬいた政党としての存在意義にかけて、「海外で戦争する国」づくりを許さないために全力をあげる決意を、党創立92周年のこの記念すべき日にあたって表明するものであります。(大きな拍手)
草の根――国民の力を一つに集め、歴史を動かし、未来を拓く力に
第三は、日本共産党が、草の根で国民と結びつき、国民とともに未来を拓く政党だということです。
日本共産党は、全国に2万の党支部、30万人を超える党員、2687人の地方議員をもち、草の根で国民としっかり結びついた自前の組織をもつ唯一の政党です。結党以来、企業・団体献金を一円も受け取らず、政党助成金も一円も受け取らず(拍手)、財政も自前でまかなう唯一の政党が日本共産党であります。(拍手)
社会の進歩は、支配勢力と国民との客観的矛盾が深刻になるだけでは現実のものとはなりません。社会変革の主人公は国民です。主人公である国民のなかに「社会を変えよう」という多数派がつくられてこそ、それは現実のものとなります。一人ひとりの国民の力は小さくとも、それを一つに集めるならば、国を動かし、歴史を動かし、未来を拓く力に必ずなっていきます。国民の力を一つに集め、社会を変える多数派をつくる仕事に、全国で草の根からコツコツと取り組んでいる政党が日本共産党であります。国民とともに希望ある未来をつくる政党が日本共産党なのであります。(拍手)
日本共産党への入党を心からよびかけます
みなさん。日本共産党を大きくすることに、日本の未来はかかっています。実は、いま私たちは、「躍進月間」と申しまして、党創立92周年、いっせい地方選挙勝利をめざして、党を強く大きくする運動に取り組んでいます。今日の私の話を聞いていただきまして、共産党もなかなかいいことをいうなと、共感していただいた方は、今日お会いしたのも何かのご縁ですから(笑い)、この記念すべき日に日本共産党に入党されることを心から訴えたいと思います。(拍手)
私も、大学1年生の時に日本共産党に入党しまして、今年で41年になります。私の場合、父も母も日本共産党員でありまして、“家業”を継いだと(笑い)いう面もあるのですが、もちろん私自身の意思で選んだ道であります。振り返ってみまして、この道を選択してよかったなとつくづく思います。いいとこですよ(笑い)。温かい人間的絆で結ばれた人間集団が日本共産党です。どうかご一緒に新しい日本への世直しに取り組もうではありませんか。(拍手)
みなさん。「亡国の政治」と決別し、日本共産党とともに、未来に責任を負う新しい政治を築こうではありませんか(「そうだ」の声、大きな拍手)。そのことを訴え、私自身、日本共産党のさらなる躍進の先頭に立ってがんばりぬく決意を申し上げて、記念講演を終わります。(「よーし」の声、大きな拍手)
日本共産党創立92周年万歳!(会場から「万歳!」の声)
ありがとうございました。(歓声、鳴りやまぬ大きな拍手)