2014年7月8日(火)
きょうの潮流
原発の新規制基準が施行されて1年になります。現在、各電力会社が再稼働へ向けて提出した申請内容が、基準を満たしているかどうかを審査中です▼近々、鹿児島県にある九州電力川内原発1、2号機の審査書案が作成されるといいます。しかし、基準自体の不備を指摘する声は絶えません。青森県に建設中の電源開発大間原発の建設差し止めを求める訴訟を起こした北海道函館市の工藤寿(とし)樹(き)市長は先週、法廷でこう述べました▼「万が一の事故の際に安全な避難が可能か、チェックが全く行われず、審査が、根拠のない『世界一厳しい基準』で行われているのは、『第2の安全神話』をつくっているにすぎない」。避難計画の作成は自治体に丸投げされ、計画の実効性を検証する国の機関がないからです▼原発から最短で23キロに位置し、避難計画の作成を義務づけられている函館市。工藤市長は、事故の想定が国や電力会社から何一つ示されていないため、避難計画を立てられないと訴えました▼日本弁護士連合会も先月、新規制基準に関する意見書を国に提出しています。放射能被害を最小限に抑えるために住民が安全に避難できる計画が作成されていることなどを審査基準に加えるべきであり、基準になければ審査を「停止すべきである」と▼「世界で最も厳しい基準」という美辞について、安倍政権も規制委も根拠をまともに示したことがありません。国民に「そう思え」と押し付けたいだけ。再稼働に一片の道理もないからです。