2014年7月6日(日)
ウルムチ騒乱から5年
広がる民族間の矛盾
中国政府は強権的テロ対策
【ウルムチ(新疆ウイグル自治区)=小林拓也】2009年7月に中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチでウイグル族と漢族が衝突し、197人(当局発表)が死亡した大規模騒乱から5日で5年になりました。ウルムチ市内の公園や駅などは、武装警察による厳戒態勢が敷かれました。
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事件から5年で、民族間の矛盾が広がっています。市内のウイグル族が多く住む地域からは、多くの漢族が転居しました。ウルムチ在住の漢族の男性は「漢族の多くはウイグル族が多い地域に行きたがらない。民族間の交流は少なくなった」と語りました。ウイグル族の女性も「漢族との深い付き合いはなくなった」と言います。
死亡事件続く
ウルムチでは、5月22日に買い物客でにぎわう朝市に車両が突っ込み、爆発する事件が発生し、39人が死亡しました。4月30日にはウルムチ南駅前で、刀を持った暴徒が群衆を襲うと同時に爆発も発生し、3人が死亡、79人が負傷しました。当局は「暴力テロ事件」と断定し、容疑者はウイグル族だと主張しています。
中国政府は5月23日から新疆を「主戦場」とする「反テロ特別行動」を開始。1カ月で「テロ」に関わる犯罪の容疑者として計約380人の身柄を拘束するなど、強権的手法でテロを抑える手法をとっています。
4年ぶり協議
中国共産党は5月下旬、新疆の政策を協議する重要会議「第2回中央新疆工作座談会」を4年ぶりに北京で開催。習近平総書記(国家主席)は「暴力テロ活動への厳しい打撃を当面の闘争の重点にする」とテロ対策を強調しました。また、少数民族の就職増や民生改善も打ち出しました。
ウルムチ騒乱は、09年7月5日、ウイグル族を中心とするデモが暴動状態となり、漢族の商店などを襲撃した事件。7日にはこれに反撃する形で漢族中心のデモがあり騒ぎが拡大しました。同年6月に広東省の玩具工場で起きた漢族とウイグル族の従業員同士の衝突事件がきっかけとされていますが、根底には、漢族とウイグル族間の格差拡大や民族文化・宗教などをめぐる摩擦があります。
新疆ウイグル自治区 中国最西端の自治区で、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスなどと国境を接しています。18世紀に清朝によるジュンガル国の武力制圧で中国領となり、「新疆」(新しい土地)と名付けられました。人口約2000万人のうち漢族以外の少数民族が約60%を占め、最多のウイグル族(トルコ系)は約45%で多くがイスラム教徒です。