2014年7月6日(日)
主張
教員の国際調査
際立つ日本のゆがみをただせ
日本の中学校の教員の勤務時間が突出して長いことが、経済協力開発機構(OECD)の教員に関する調査で明らかになりました。学級運営や教科指導を「よくできている」と自己評価した教員の割合も、日本は参加国平均を大きく下回りました。日本の教育がかかえるゆがみの一端を浮き彫りにしたものといえます。
勤務時間は最長
OECD調査では、日本の教員の勤務時間は週53・9時間でした。調査に参加した34カ国・地域の平均38・3時間を15時間以上も上回り、最長です。
教員の多忙化は小・中・高校を問わず、かねてから問題になってきました。全日本教職員組合(全教)の調査では教員の3人に1人が「過労死ライン」の月80時間を超える時間外勤務をしています。精神疾患で休職する教員も高水準です。多くの教員は子どもたちのために奮闘していますが、一人ひとりに心を寄せるには困難を極めています。勉強の遅れている子どもに丁寧に教え、いじめなどの問題に的確に対応するためにも、教員がゆとりをもって教育にあたれるようにすることは急務です。
長時間勤務の解消には、何よりも教職員の定数を抜本的に増やすことです。OECD調査で校長に、「質の高い指導を行う上で妨げになっている」のは何かを聞いたところ、日本は「教員の不足」を挙げた校長が79・7%で、参加国平均の38・4%の2倍以上でした。
ところが第2次安倍晋三政権は、発足とともに「35人学級」の計画を小1でストップしました。今年度は少子化に伴う自然減を上回って公立小中学校の教職員定数を削減しました。国民の願いに逆行する姿勢です。
教員の仕事を精選することも必要です。OECD調査によると日本の教員は資料作成などの事務作業時間が5・5時間で参加国平均の2倍近くに達しました。授業など教員本来の仕事以外のところで時間をとられる日本の教育現場の異常さは明らかです。背景には、報告を大量に出させて教員を管理するやり方があります。抜本的に縮小するべきです。
部活動など課外活動指導時間は7・7時間で調査参加国平均2・1時間の3・7倍です。日本独特の部活動のあり方をどうするか、検討も必要な段階といえます。
日本は法令で、特別な場合を除き教員に時間外勤務を命じることを禁じ、時間外勤務手当を支給しないと定めています。しかし実際は、「自発的に勤務するのは問題ない」として、何の手当もないまま長時間の時間外勤務が放置されています。法改正の実現は長時間勤務の歯止めにつながります。
予算増やし自主性尊重を
OECD調査で、日本の校長が「実力を発揮する上で障壁」に挙げたのは「不十分な学校予算や資源」が84%、「政府の規制や政策」が65%でした。予算は少なく、国から指図ばかりされて自主性を発揮できない現状を示しています。
予算を抑え、「戦争をする国」のための安倍流「愛国心」教育と異常な競争主義を押し付ける「教育再生」は日本の教育をさらにゆがめる方向です。教員の苦労に正面から応え、予算を増やし、長時間労働をなくし、自主性を尊重して教員たちの力が十分発揮できるようにすることを強く求めます。