2014年7月5日(土)
きょうの潮流
世界でも有数の規模をもつ米国ボストン美術館が開館したのは1876年の7月4日でした。建国100年を記念してつくられた美術館は日本との関係も深く、浮世絵や工芸品など多数の日本美術を所蔵しています▼この年、万国博覧会がフィラデルフィアで開催。ときの明治政府は参加に前向きで、日本家屋を建て、多くの人と出品物を送り込みました。学芸員を会場に派遣したボストン美術館もここで日本の優品を最初に購入したといいます▼2年後のパリ万博をふくめ、当時の欧米は空前の日本ブーム。日本の文化や美術を愛好し、生活や作品に取り入れようとする潮流は「ジャポニスム」と呼ばれました。モネやマネ、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ…。影響をうけた画家は枚挙にいとまがありません▼日本の美と出会った西洋の芸術家が、何を学び取り入れ、新たな美を創造したのか。それを作品とともに検証する「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」が東京・世田谷美術館で始まっています▼歌麿や北斎、広重といった浮世絵師が細やかに描く風景や女性、そして人びとの生活。その斬新な構図や鮮やかな色づかい、自在なモチーフは、華やかさを競ってきた西洋芸術に新風を吹き込みました▼町人文化から生まれ、海を渡った日本の美術工芸品は、欧米の市民にも親しまれました。自然を尊び、物を大切に、日々のつましい暮らしをいとおしむ。時代は変わり、豊かな社会になっても、私たちが失ってはならない“日本の心”です。