2014年7月3日(木)
きょうの潮流
どうしたら、戦争の底にあるものを表現できるだろうか―。無数の弾丸が飛び交い、爆弾が落とされるなか、20代の若き戦場カメラマン、石川文洋(ぶんよう)さんは自問をくり返しました▼ベトナム戦争の最前線で、戦争の狂気やたたかいを強要された兵士、争いの犠牲になった農民や子どもたちを記録してきた石川さん。米軍に同行し、「侵している側からの取材」に複雑な感情を抱きながら、シャッターを押しつづけました▼従軍取材を始めてから、今年で50年。その節目に軌跡をたどる映画「石川文洋を旅する」が公開されています。ベトナムから帰国後、ふるさと沖縄に目を向けた石川さん。巨大基地が居座る現実を、76歳のいまも記録しつづけています▼「軍隊がいるから戦争になる」。戦場の悲惨さを味わってきた石川さんの持論です。軍隊は抑止力にはならない。それどころか、何よりも大切な命が戦闘に巻き込まれ、奪われてしまう。日本のため、国益のため、というのが一番危ないと▼時代が進んでも、石川さんのカメラには基地と隣り合わせで暮らす人びとの悲痛な訴えや、普天間基地に配備された最新鋭輸送機オスプレイの姿が写ります。こうした現状を容認する日本政府への怒りとともに▼映画の終わり。ベトナムの農村でおびえる少女。荒廃した沖縄でふるえる幼子。「報道カメラマンの使命は戦場で起きていることを第三者に伝えること。そして次の世代にその写真を伝えていくこと」。平和をもとめる石川さんの旅はつづきます。