2014年7月1日(火)
原発大国フランス 依存率引き下げへ議論
エネルギー移行法案
費用増の懸念背景
【パリ=島崎桂】原発大国であるフランスのオランド大統領が公約する電力生産の原発依存率75%から50%への引き下げについて、その実現に向けた「エネルギー移行法案」をめぐる議論が注目を集めています。原発関連費用の増大が明らかになる中、法案は再生可能エネルギーの拡充や低炭素社会の実現に向け、野心的な目標を設定。一方で、目標達成への道筋には不透明さが多く残っています。
仏議会調査委員会は今年2月「原子力(エネルギー)に賛成でも反対でもない」立場から、仏会計検査院に対し「原子力由来の電力の価格」に関する調査を依頼しました。
電力公社(EDF)や原子力大手アレバなどへの聞き取りを基に同院は5月末、調査結果を公表。2010〜13年の3年間で、原発の維持管理費が18%、放射性廃棄物の管理費が15%、原発解体費用の積立金が13%と、原発関連費用が軒並み増えていました。
その結果、原発由来の電力の生産費用は1000キロワット時あたり、49・6ユーロ(約6900円)から59・8ユーロ(約8300円)へ約21%上昇。同期間の物価上昇率4・1%を大きく上回る結果となり、同院は原子力関連費用の増大に懸念を表明しました。
原発に起因する将来的な消費者負担の増加が見込まれる中、ロワイヤル環境相は6月18日、「エネルギー移行法案」の概要を発表しました。
30年を目標に消費電力に占める再生可能エネルギーの割合を32%まで高める方針を示したほか、▽エネルギー消費を50年までに50%削減▽風力・太陽光発電所の建設手続きの簡素化▽化石燃料消費を30年までに30%削減▽電気自動車の利用促進策▽住宅の省エネ化に向けた基金創設―など意欲的な目標が並びました。
しかし、肝心の原発依存率の低下に向けた具体策は示されていません。
同法案は原発の稼働期限を設けず、原発閉鎖の判断は引き続きEDFが行います。オランド大統領が任期中の閉鎖を公約した仏最古のフッセンハイム原発についての言及もありません。EDF側は、現行40年の稼働期限を50年に延長するよう求めています。
ロイター通信によると、フランスの環境政党ヨーロッパエコロジー・緑の党のマメール議員は「EDFにエネルギー政策の決定権を残しながら、エネルギー移行を話すことはできない」として、同法案は「欺瞞(ぎまん)だ」と非難しています。
同法案は今後、専門家からの意見聴取を重ね、今年末から来年初頭の採決を目指し、今秋にも国民議会(下院)で審議入りする予定です。