2014年6月25日(水)
武力行使の新3要件試案
閣議決定 日程優先の作文
二重三重のクーデター的手法
7月上旬の閣議決定という「日程ありき」の作文―。24日の与党協議で、自民党の高村正彦副総裁が示した「武力行使の3要件」(新3要件)の「試案」から受けた印象です。
世論に包囲され
新3要件は、政府が1954年の自衛隊発足以来、堅持してきた「自衛権発動の3要件」に代わるもの。解釈改憲に関する閣議決定文の核心部分とされます。武力行使を「わが国への急迫不正の侵害(武力攻撃)が発生した場合」に限定していた要件を、「他国に対する武力攻撃が発生」した場合にも拡大するものです。
海外での無限定の武力行使が可能になるという本質は、「試案」においても何ら変わりません。これが「憲法9条の下で認められる」はずはありません。
「試案」は、自民党から提案があった、武力行使を伴う「集団安全保障」措置は明記せず、「集団的自衛権」という文言も、「新3要件」からは消え、別の文章(下記)にもぐりこませました。しかも、「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合もある」と、“抑制”的な表現にしています。一方、高村氏は武力行使に伴う集団安保措置については「現時点ではふれない」と述べており、可能性を示しています。
政府・自民党は、「集団安保」も「集団的自衛権」も、安倍晋三首相の強い意向を受けて盛り込もうとしてきました。いかなる場合でも、米国主導の海外での武力行使に参加するためです。
しかし、いずれも世論の反発は日増しに高まっており、23日付で報道された「朝日」「共同通信」の世論調査でも、5〜6割以上が反対しています。
自公両党だけの密室協議であっても、国民世論に包囲され、そう簡単には閣議決定を強行できない状況があるのは確かです。
狙いが透ける
それでも、首相は「年末のガイドライン(日米軍事協力の指針)再改定に憲法解釈変更を反映させる」ことを至上命題としています。そこから逆算して、「通常国会会期中の閣議決定」を主張してきました。この日程は遅れましたが、9月までにガイドライン改定の日本側概要をまとめるために、「7月上旬の豪州訪問まで」を新たな区切りに設定しました。7月1日か4日が想定されています。
国民の反発が強い部分はあいまいな表現にとどめておいて、来週に閣議決定を強行するために、とにかく逃げ切ろう―。たとえ、「アリの一穴」であっても、憲法解釈を変更してしまえば、後でいくらでも拡大してしまおう―という狙いが透けて見えます。
そもそも、長年の国会論戦を通して形成されてきた憲法解釈を、一片の閣議決定で変えること自体、許されることではありません。加えて、その閣議決定文自体、真の狙いを国民に示さないまま逃げ切る手法は、二重三重のクーデター的な手法です。こんなやり方は、閣議決定の名に値しません。 (竹下岳)