2014年6月20日(金)
主張
集団的自衛権
閣議決定こそ国民の命脅かす
安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使を可能にする解釈改憲の閣議決定を、国民の批判や不安の声に耳を貸すこともなく、国会でのまともな議論もなく、自民・公明与党の密室協議だけで強行しようとしています。17日には政府が閣議決定の原案を与党に提示するなど、早期合意を迫っています。原案は、戦争を放棄し、戦力の保持を禁じた憲法9条を破壊し、自衛隊の海外派兵を際限なく拡大する極めて重大な内容となっています。閣議決定ありきの安倍・自公政権の暴走は絶対に許されません。
際限なく武力を行使
原案は、与党協議会に座長の高村正彦自民党副総裁が示した「たたき台」をもとにしています。
憲法9条の下で許される「武力の行使」について、「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合も「必要最小限度の実力行使」が認められるとしています。その上で、こうした武力行使は、「国際法上は集団的自衛権が根拠になる」とし、集団的自衛権の行使であることを明確にしています。
歴代内閣が「憲法9条の下で集団的自衛権の行使は許されない」としてきた憲法解釈を百八十度ひっくり返す大転換にほかなりません。自衛隊創設から半世紀以上にわたり政府が堅持してきた憲法解釈を、一内閣の閣議決定というクーデター的手法で変更することは言語道断です。
原案は、欠陥、矛盾だらけです。
集団的自衛権行使の要件である「他国に対する武力攻撃」の「他国」には地理的な限定がなく、世界中の国が対象になります。日本と「密接な関係にある他国」に修正する動きもありますが、「密接な関係」を判断するのは時の政府であり、恣意(しい)的な解釈が可能です。
「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」というのがどんな事態を指すかも極めてあいまいです。しかも、その「おそれ」だけで集団的自衛権が行使できれば、政府の勝手な判断で海外での武力行使は歯止めなく広がることになります。「おそれ」を「切迫した事態」という表現に改める意見もありますが、実際は起こっていない未来の可能性を政府が判断する点はどちらも同じです。
「必要最小限度の実力行使」というのも、まったくごまかしです。
首相は「自衛隊が武力行使を目的として他国での戦闘に参加することはこれからもない」と繰り返してきました。しかし、閣議決定では、中東ペルシャ湾を念頭に、戦争さなかの機雷掃海という武力行使そのものの活動を可能にする意向を示しています。米軍などへの兵たん活動では、イラク戦争やアフガン戦争の際には禁じられていた「戦闘地域」への自衛隊派兵にも本格的に道を開いています。
「ノー」の声いっそう
与党協議で公明党は当初、国民の理解を得るため「(政府が示した)一つひとつの事例をしっかり議論させてもらいたい」(北側一雄副代表)としていました。ところが今や、「この段階に至って事例に固執するのはいかがなものか」(同)とし、閣議決定の文案協議に応じています。若者を戦場に送り、命を脅かす閣議決定ノーの声をさらに大きく上げる時です。