2014年6月20日(金)
派遣大手パソナを所管 厚労相接待
閣僚会議で「雇用破壊」投合
安倍晋三内閣が、産業競争力会議で「残業代ゼロ」政策を打ち出すなど、労働者派遣法改悪はじめ労働法制緩和をすすめるなか、労働行政を所管する田村憲久厚生労働相が、規制緩和で利益をあげる人材派遣会社大手のパソナグループの接待施設を訪れていたことが判明、問題となっています。同グループの竹中平蔵会長(慶大教授)が産業競争力会議の民間議員を務めるだけにパソナと安倍政権との蜜月ぶりも問われています。
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田村厚労相が、東京都港区にあるパソナの接待施設「仁風林(にんぷうりん)」を訪れたことをみずから認めたのは、5月28日の衆院厚生労働委員会でのこと。覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された歌手のASKA容疑者が、一緒に逮捕されたパソナの関連企業社員と知り合ったのが「仁風林」とされます。
田村厚労相は、同委員会で「この接待施設には、現職閣僚を含めて複数の政界関係者が出入りしていたと報じられている。その一人は田村大臣だといわれているが」と問われ、次のように認めたのです。
ノコノコ
―昨年の2月28日、「顔なじみ」のパソナグループの南部靖之代表に「ゲストスピーカーで話してほしい」といわれ、うかがった。「30分ぐらい、お話と質疑応答をした」。その後、「相応な食事」が出た。
田村氏は「パソナから政治献金およびパーティー券は一切買ってもらっていない」「(当日)講演料もお車代ももらっていない」とのべましたが、労働行政の責任者がノコノコと所管企業の接待施設に出かけていくこと自体、大問題です。
1976年2月に創業したパソナは、86年7月、労働者派遣法の施行により、一般労働者派遣事業許可を取得したのをはじめ、2003年10月、東証一部に上場するなど急成長。小泉内閣で閣僚となり、「弱肉強食」の規制緩和をすすめた竹中氏を07年1月に特別顧問として迎え入れ、09年8月からは取締役会長にすえ、いまでは資本金50億円、グループ会社約40社、売上高2077億円(13年5月期)を誇る業界最大手です。
ヨイショ
グループの総帥、南部氏は、田村氏が「仁風林」接待に出席する2週間前の昨年2月13日に官邸で開かれた安倍首相のお声がかりの「若者・女性活躍推進フォーラム」という閣僚会議の1回目の会合に、日本人材派遣協会会長らとともに「有識者」として参加しています。
議事録によると、南部氏は「正規、非正規の間の行き来しやすい柔軟な働き方、雇用システム」をつくることや、国の就職支援事業を「大胆に民間にアウトソーシング(外部委託)すべき」だなどと発言。
首相らとともに厚労相として出席した田村氏は「南部委員がおっしゃられた、政府の機関は民間のニーズをちゃんと拾っていないではないかというようなお言葉もあるので、いろいろ連携させていただきながら、民間のニーズがしっかりと得られるような形で進めてまいりたい」と“ヨイショ”発言をしています。
この閣僚会議は、昨年5月19日まで計8回開かれ、南部氏の“提言”は、ほぼそのまま、昨年6月、安倍首相が発表した成長戦略に盛り込まれました。
パソナの田村氏接待目的は、こんなところにあったのでは―。人材派遣業を所管する官庁のトップが、監督すべき特定企業と癒着することは厳しく問われざるをえません。