2014年6月19日(木)
主張
「医療介護法」成立
国民の権利奪う暴挙を許さず
国民の安心の仕組みを根本から揺るがす医療・介護総合法が、自民・公明両党などの賛成多数で参院で可決、成立しました。参院審議で法案の重大な欠陥が明らかになり、政府が自らおこなってきた法案の説明を撤回に追い込まれるなど、ずさんな法案の姿が浮き彫りになるなかでの強行です。患者、高齢者、医療・介護従事者の怒り、地方自治体からの異論を無視して成立を押し切った安倍晋三政権と与党に一片の道理もありません。医療・介護をはじめ社会保障破壊に突き進む安倍政権の暴走を許さない国民のたたかいを、さらに広げることが必要です。
負担増の根拠崩れ去る
医療・介護総合法は、安倍政権がすすめる消費税増税と社会保障「一体改悪」路線の柱です。「自己責任の社会保障」の姿勢を露骨に打ち出し、医療・介護のさまざまな分野で国民に負担増と給付減を強いる方針を列挙しています。
介護保険では2000年の制度発足以来、前例のない大改悪がいくつも盛り込まれました。年金収入280万円以上の高齢者のサービス利用料負担の1割から2割への引き上げはその典型です。高齢者5人に1人が対象となる利用料2倍化は、介護を必要とする高齢者の生活に打撃を与え、利用抑制を引き起こしかねないものです。
しかも、厚労省の説明に重大なごまかしがあることが日本共産党の小池晃参院議員の追及で判明しました。“負担増となる高齢者世帯では経済的余裕がある”と説明してきた厚労省資料は実はデタラメで、とてもそんな余裕がないことが事実だったのです。動かぬ証拠を突きつけられた厚労省は「余裕がある」との説明を撤回し、田村憲久厚労相は非を認めました。負担増を強いる根拠が崩れた以上、法案を撤回するのが筋です。
要支援1・同2の人が使う訪問・通所介護を国の保険給付対象から除外し、市町村の事業に“丸投げ”する改悪でも、従来の厚労省の説明と異なり、サービスが大幅に低下する恐れがある新事実も発覚しました。特別養護老人ホームの入所基準を「要介護3」以上に原則化する一方、「待機者」にもなれなくなった多数の人の行き場をなんら保障しない政府の無責任さも浮き彫りになりました。
社会保障の基本にかかわる19本もの法案を一括審議でごり押しした安倍政権の暴走は、国民の命と健康を軽んじる姿勢そのものです。
国民に保険料負担増ばかり強い、介護を受ける権利を奪う医療・介護総合法は、制度の理念に真っ向から逆らうものです。「介護難民」「老人漂流社会」を深刻化させ、患者と高齢者の症状悪化を加速し、医療・介護保険の財政をさらに悪化させるのは必至です。
憲法25条こそ力に
「負担増・給付減」による利用抑制路線の破たんと行き詰まりは、いよいよ明らかです。個人や家族に負担と犠牲を強いる「自己責任の社会保障」ときっぱり決別することが求められます。
安倍政権の社会保障の連続改悪を阻むたたかいを広げるとともに、地方自治体ごとで医療・介護の給付水準の切り下げ、後退を許さない世論と運動が重要です。
憲法25条にもとづき国が社会保障の向上・増進に責任を持ち、国民の生存権を保障する政治への転換がいよいよ急がれます。