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2014年6月18日(水)

安倍内閣の野望「残業代ゼロ」 (4)

「成果で評価」というけれど…

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(写真)帰宅するサラリーマン=東京都内

 安倍晋三首相は、近くまとめる「成長戦略」で、「成果で評価される自由な働き方にふさわしい、労働時間制度の新たな選択肢を示す」といいます。制度の提案者である産業競争力会議の長谷川閑史氏(武田薬品社長)は、「時間ではなく成果で評価される働き方」「成果に応じた報酬を基本に据える新たな働き方」は働くもののニーズに応えるものだといいます。

装い変えて

 いったい「成果で評価される自由な働き方」とはどんな働き方でしょうか。さかんに新しさを強調していますが、1990年代中頃から大企業を中心に導入されてきた成果主義賃金制度を装いを変えて持ち出してきたものです。

 成果主義賃金制度は、1993年に電機大手の富士通が導入して知られるようになりました。95年に当時の日経連が「新時代の日本的経営」で成果主義への転換を提唱したことをうけて、裁量労働制とのセットで急速に広がりました。

 日本の賃金制度は、生計費、年齢・勤続年数に重きをおいた年功賃金といわれるものが中心でした。これを上司の人事考課による目標達成度で賃金を決める方式に転換しようというものです。

 二つの大きなねらいがありました。ひとつは総額人件費の抑制です。もうひとつが「成果をあげれば賃金が上がる」という宣伝で労働者を競わせ、差別化し、個別支配をはかることです。結果は、賃金が上がるどころか、目標を達成するために長時間のただ働きがまん延し、メンタル障害が増え、職場の荒廃がすすみました。「がんばれば報われる」はずが「がんばっても報われない」ことが明らかになり、多くの企業が制度の廃止または見直しをせざるをえませんでした。

 厚生労働省が2008年に出した「労働経済白書」は、成果主義賃金制度の拡大にふれて、「企業の対応は人件費抑制的な視点に傾きがちで、労働者の満足度は長期に低下」していると指摘しました。とくに賃金が低いことと、評価の納得性が確保されていない問題をあげ、企業の反省を求めました。政府でさえ是正を求めざるをえないほど弊害は大きいものでした。

 安倍首相や長谷川氏は「成果で評価する」制度と簡単にいいますが、客観的でだれもが納得できる「評価」「査定」は実際には不可能です。たとえばある開発プロジェクトチームで、全員が夜なべして頑張って納期までに仕事を完了させたとします。しかし全員が同じ最高ランクに評価されるわけではありません。

 「相対評価」はランクごとに割合が決まっていて、必ず下位にランクされる人が出ます。15%が最下位という企業もあります。最上位と最下位の報酬の差額が100万円以上という例もみられます。まったく同じように働き同じ成果でも、上司の主観による評価で差別され、賃金で大きな格差がつくのです。

長時間労働

 成果主義賃金制度は、企業による「評価」で労働者の賃金が決まるので、企業の支配力が圧倒的に強まります。長谷川氏がいうような「効率的に働けば短時間労働でも報酬確保」になるほど企業は甘くはありません。むしろ労働時間の適用除外を幸いに、際限ない長時間労働に追い込まれかねません。

 4月22日の会議で榊原定征議員(東レ会長、6月3日に経団連会長に就任)が、企業側の本音を語っています。

 「熾烈(しれつ)な国際競争の中で、日本企業の競争力を確保・向上させるためには、労働時間規制の適用除外は必要不可欠である」といい、具体的な企業側のニーズとして次のようにのべています。「国際業務における時差への対応、技術開発、顧客対応、あるいは新設の設備の立ち上げ、受注獲得時などで、1年間ぐらいの長期にわたって、集中的・波状的な対応が必要なケースが数多くある」

 成果主義賃金と労働時間の適用除外が結びついたとき、労働者の働き方は劇的に悪化することは間違いありません。労働組合が組織の垣根を越え、世論を大きく高めて政府、財界のたくらみを阻止するたたかいの強化が急がれています。

 (おわり)

 (この連載は、13日、14日、17日に掲載しました)


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