2014年6月15日(日)
シーア派最高権威 参戦訴え
過激派に対抗
イラク
【カイロ=小泉大介】イラクのイスラム教シーア派最高権威シスタニ師は13日、信者に対し、北中部の各都市を制圧し首都バグダッドに迫ろうとしている同教スンニ派の過激派組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」との戦闘に参加するよう訴えました。北部ではクルド人治安部隊が独自の動きを見せており、イラク情勢は「国家分裂」の様相も帯びてきています。
シスタニ師は代理人を通じてメッセージを発し、「武器を持ってテロリストとたたかう能力のあるものは、国家防衛のため志願して政府軍に参加せよ」と呼びかけました。またシーア派を国教とする隣国イランの国営放送は、同国のロウハニ大統領がイラクのマリキ首相に対し、「テロとのたたかい」であらゆる努力を行うと表明したと伝えました。
現地からの報道によると、北部モスルや北中部ティクリートを制圧したISISは13日も南進を続け、首都北方約130キロのサマラや同約60キロのバクバの郊外で政府軍と交戦しました。政府軍はティクリートのISIS拠点を空爆するなど奪還作戦を開始したもようです。
一方、北部3県を統治しているクルド自治政府の治安部隊は12日から13日にかけ、隣接する産油都市キルクークを掌握しました。自治政府は以前から、同地をクルド自治区に編入するよう主張しており、今回のISISの攻勢による「治安の空白」を利用し、編入の既成事実化をすすめる可能性があります。
おことわり 本紙はこれまでイラクの過激派組織の名称を「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」としてきましたが、本日付から「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」と表記します。