2014年6月12日(木)
改憲手続き法改定案
最低投票率の定めなし
不当に運動制限 有料広告野放し
9条改憲の条件づくりとなる改憲手続き法(国民投票法)改定案が参院憲法審査会で、可決されました。しかし、衆院につづき参院審査会審議でも、現行法の根本的欠陥をそのままに、とにかく憲法改定の国民投票ができるようにするという改定案の問題点が浮き彫りになりました。
改憲手続き法には、一定の投票率を超えなければ投票を無効とする最低投票率の定めがありません。少数の有権者の賛成で改憲案が承認されかねず、最高法規としての憲法の信頼性が揺らぐ危険があります。
日本共産党の仁比聡平議員はこの根本欠陥を指摘し、手続き法では最低投票率について「検討」を求める「付帯決議」までつけられていると追及しました。しかし、発議者の船田元議員(自民党)は「この議論はテーマにならなかった」と開き直りました。
根本欠陥を放置したまま、とにかく改定案を押し切るやり方には何の道理もありません。参考人審議では、日本共産党の吉良よし子議員の質問に、「最低投票率に関しては何らかの数字を置く方がいい」(名古屋大学大学院の愛敬浩二教授)、「(低投票に対する)一定の歯止めは必要」(日弁連の伊藤真弁護士)との指摘が相次いで出されました。
審議ではさらに、国民投票運動を不当に制限する一方で有料意見広告は野放しにするなど、改憲推進勢力に有利な仕組みが問題になっていました。ところが、改定案は、こうした欠陥を是正するどころか、公務員による国民投票運動をさらに制限。裁判官などの運動を禁止し、組織による運動の規制まで新たに検討条項に盛り込みました。
船田氏は、規制が検討される組織には「NPO(民間非営利団体)も考えられる」「宗教団体というのもある」と答弁し、規制の範囲がいくらでも広がる可能性に言及。「公務員の影響力は大きい」などと述べ、改憲派に脅威となる公務員の運動を狙い撃ちする意図を語りました。
今、改憲を望む声は国民のなかにありません。安倍政権が進める憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認への動きに国民はいっそう警戒感を強めています。
国民が求めず、欠陥だらけの改憲手続き法は改定ではなく廃止すべきです。 (佐藤高志)