2014年6月8日(日)
きょうの潮流
そんなに急いでどこへいく―。最近の安倍晋三首相の言動を見ると、昔流行した標語の一節が頭をよぎります▼戦後、歴代政権が「憲法違反」だとして禁じてきた集団的自衛権の行使容認を狙う安倍首相。閣議決定の時期について、当初は「期限を区切らない」と言っていました。それが「年末のガイドライン(日米軍事協力の指針)改定まで」となり、さらに、国会会期末の22日までを念頭に、与党協議の「加速」を促しています▼相次ぐ外遊で「集団的自衛権の検討」をアピールして気が大きくなったのか、あるいは日に日に大きくなる反対世論に焦りが生じたのか。急ぎ始めた首相の胸の内は分かりません▼一昨日の与党協議で政府は、公明党が異論を示していた「戦地派兵」拡大の「4条件」を提案から3日で撤回。領海警備など「グレーゾーン」と呼ばれる分野でも法改正を取り下げました。まるで、公明党と合意を得るための「在庫一掃セール」です▼ただ、「4条件」の代わりに出してきた新基準は、実際に銃弾が飛び交っている「戦闘現場」でなければ派兵してもいいというもの。「戦闘地域にいかない」という歯止めはなくなります。戦地という「行き先」だけは、はっきりしているのです▼首相は公明党を口説き落とせば、何とでもなると思っているのかもしれません。しかし、その前に一度たりとも国民と向き合うことなく暴走すれば、国民のかつてない反撃が待ち受けているでしょう。「急げば躓(つまず)く」。首相はそのことを思い知るはずです。