2014年6月5日(木)
きょうの潮流
猛暑に豪雨。荒れる地球に命をさらしている時代、これまでとは違う感覚を身にまとわなければならない現実があります。自然環境の変化にくわえ、大震災と原発事故もわれわれの意識に変革を迫りました▼社会のありようや人の営み、生き方そのものが問われ続けている3・11後。それは、従来にしがみつこうとする政治や経済の世界よりも、文化・芸術の広い分野で今日的な課題として鋭く表れています▼東京都美術館で開催中の公募写真展「視点」もそんな現代を写し出します。時間と回数をかけた組み写真や、ふとした瞬間をとらえた一枚。自由な発想とともに、撮影者の意志や行動が伝わってきます▼今回の視点賞は、火山灰が積もる桜島を撮った「降灰の島」。3・11のその後や事故、異常気象…。さまざまな災禍に襲われた列島の傷痕です。自然や里山で暮らす人たちの生きた表情の一方で、荒涼とした都会の風景。抑圧する権力とたたかう国民の姿もあります▼山本やす子事務局長は、3年前と比べて笑顔の写真が増えてきたといいます。「傷痕だけでなく、いま被災者が何を望んでいるか、それをテーマにした作品もみられます。現実の生活感が描かれているのが『視点』の特徴ですから」▼今回のもう一つの特徴はモノクロ写真が多かったこと。入賞作品の半数以上が白黒の濃淡で表現され、それも「視点」ならではといいます。「モノクロはテーマがシャープに見える」という専門家も。現代社会の光と影が語りかけてきます。