2014年6月3日(火)
ブラックバイトから学生生活を守ろう
2014年6月2日 日本共産党
日本共産党が2日に発表した「ブラックバイトから学生生活を守ろう」の全文は次の通りです。
学生のアルバイトに異変が起きています。
若者を「使いつぶす」ブラック企業のような違法・無法な働かせ方が学生アルバイトにも広がっています。メディアでも「急増!『ブラックバイト』」(「毎日」)「不当ノルマ、ただ働き 若者を苦しめるブラックバイト横行」(「東京」)「違法行為が横行し、学業に影響するほどの長時間労働を強いられるケースも」(「読売」)などと取り上げられ、社会問題になってきています。大学教員からも、「授業中もバイト先から連絡が入り、集中できない」「シフトの変更がききにくく、ゼミ合宿の日程が決められない」など、告発の声があがっています。バイトと学業を両立できず、留年や大学中退に追い込まれる深刻なケースまであり、ブラックバイトは、学生生活と大学教育の障害となっています。
何が起きているのか――違法行為や過酷な労働、パワハラが学生バイトにも広がっている
かつては、学生バイトといえば、あくまでも正規雇用の補助でした。低賃金だが責任は軽く、テスト前には休むことができ、バイト先も比較的自由に選べる――それが学生バイトの従来の一般的なイメージでしょう。
しかし、現在はそうしたイメージが通用しなくなっています。低賃金・低処遇にもかかわらず、正社員並みの過度な責任やノルマを課される例が多くあります。
無理なシフトを組まれる――「シフトの連絡が直前。予定があるのにシフトを急に入れられる」(ファストフード)、「テスト期間なのに『がんばってシフトに入ってくれ』と言われる」(結婚式場)
違法・脱法行為――「15分未満の勤務時間を切り捨てられる」(スーパー)、「授業の準備や授業後の報告書づくりが賃金に加算されない」(塾講師)、「売れ残りの商品を買わされる」(コンビニ)、「皿を割ったら弁償」(ホテル)
最低賃金ギリギリの低賃金――「時給750円。せめて800円以上にしてほしい。安いから辞めたい」、「夜間でも時給750円」(長野県 コンビニなど)
辞められない――「辞めたいが、いろいろ言われて辞めさせてもらえない」(居酒屋)、「バイト最年長という立場からシフトを無理に入れられ、深夜にも呼び出される。辞めるなと念をおされる」(飲食)、「辞めたいと言ったら、『求人広告費分として給料から4分の3を差し引く』と言われた」(飲食店)
このように、学生の実情も、働く人間としての権利も無視した働かせ方、“ただ働き”“罰金”などの違法・脱法行為が学生バイトにも広がっています。
なぜ広がったのか――非正規雇用の拡大と国民の所得減少がブラックバイトを生み出した
なぜ「ブラックバイト」がここまで広がったのでしょうか。
非正規雇用の拡大と「基幹化」の弊害が、学生バイトにも深刻な影響をもたらした……第一に、非正規雇用の比率が現在は4割近くにもなり、かつては正社員が行っていたような仕事を、アルバイトなど非正規に肩代わりさせる動き、「非正規雇用の基幹化」が進んだことです。その結果、若者を「使い捨て」にする劣悪な労働環境が学生バイトにも容赦なく広がっています。
とくに学生バイトの多くは、飲食店、コンビニ、アパレル関係、大手学習塾など、チェーン展開している業種で働いています。これらの業種では「一つの店舗に正社員は一人、あとは全員非正規」というのが一般的で、「正社員は複数の店舗を受け持ち、正社員が店に一人もいない時間が恒常的に発生する」などのケースも珍しくありません。そのために時給は同じなのに、バイトが「バイトリーダー」「時間帯責任者」などの「役職名」をつけられ、シフトの管理・調節や新人育成、不足商品の発注、店舗の鍵の管理など、正社員並みの過大な仕事と責任を負わされ、“授業よりもバイト優先”“君が来なければ店がまわらない”という状態に置かれていきます。学習塾では、授業以外にも、事務作業から保護者への対応まで学生バイトにやらせながら、授業時間以外は無給ということがまかりとおっています。
学生本人も、職場や同僚、お客や生徒への義務感や責任感から、辞めるに辞められない、授業や試験を犠牲にしてもシフトを断れないという意識に追い込まれています。
学生バイトでも“失業”できない―仕送りは減り、巨額の借金となる奨学金にも頼れない……第二に、多くの学生が、学生生活を維持するためには、バイトからの収入を途絶えさせることができない状態にあることです。
東京私大教連の調べでは、首都圏の私立大学に通う学生の家庭からの仕送りは、2013年度で月平均8万9千円。ピークだった1994年度の12万4900円から減り続け、調査開始以来、最低となっています。仕送りから家賃を引いた1日当たりの生活費は平均937円で、ピークだった1990年度の4割以下です。国民の所得が減り続けるなかで、学生のバイト依存が高まっています。
公的な奨学金はすべて貸与制で、うち7割が有利子です。月10万円を4年間借りれば480万円、これに利子がついて600万円以上を卒業後に返済しなければなりません。就職難で、将来安定した職業につけるかも分からない不安から、奨学金をあきらめるか、借りる場合でもできるだけ抑えざるを得ない状況です。若者からの労働相談を多く受けている首都圏青年ユニオンは近年、「バイトを辞めても、すぐに次のバイトが見つかるかわからない。だから不満があっても辞められない」という学生からの相談が増えているとしています。
ブラックバイト問題の解決のために――学生のみなさん、大学教育と労働問題にたずさわるみなさんが力を合わせることをよびかけます
将来ある若者が、ブラックバイトで学業や生活を脅かされ、無権利状態におかれている現状を放置することはできません。
学生バイトであっても国の労働行政には、違法・脱法行為をなくし、適正な労働環境にしていく責任があります。日本共産党は、政府がブラックバイトなどと言われる現状を放置せずに、適正化するための取り組みを行うことを強く要求します。
同時に、ブラックバイトは、学生の社会経験の未熟さや労働法・雇用のルールへの知識の乏しさにつけこんだ違法・脱法行為で成り立っています。学生バイトには労働組合もほとんどなく、一人ひとりがバラバラになっている弱さも利用しています。こうした不正な行為に対しては、社会的な世論と運動で包囲することがもっとも有効です。
何よりも、当事者である学生のみなさんが、学び、つながり、声を上げることが、ブラックバイトをなくす最大の力です。さらに、大学の教職員をはじめ、労働・雇用問題に取り組んでいるみなさん、地域の健全な発展を願う商工団体や自治体のみなさん、若者に希望ある未来をと願うすべてのみなさんが、ブラックバイトをなくすために、知恵と力を合わせることを呼びかけます。
学生バイトにもすべての労働法が適用されます――違法な働かせ方をやめさせよう
アルバイトは法律上「短時間労働者」です。契約期間や勤務条件、職責などが正社員より緩やかに定められていても、雇い主との法律上の関係は正社員と変わりません。労働関係の法令(労働基準法、労働安全衛生法など)は、アルバイトにも適用されます。
シフトの一方的な変更・押しつけは許されない……労働日・労働時間は雇用契約の基本中の基本であり、労働基準法で書面での明示が義務づけられています。契約にない日や時間にシフトを入れるためには、働く人との「合意」が大前提です。一方的に押しつけたり、パワハラ的な言辞で強制することは許されません。そんなことをするのは、「契約を守れない」会社であることを世間に表明しているようなものです。「バイトだから」「若いから」と足元を見て押しつけてくることも、まさに「ブラック」であり、許されないことです。
違法・脱法行為をやめさせよう……サービス(不払い)残業は違法です。着替えや引き継ぎ、掃除などの時間も1分単位で賃金を請求でき、1日8時間を超えて働いた分や、午後10時以降の深夜勤務については割増賃金が支払われます。退職を希望しているのに辞めさせない、故意でないミスについて弁償を迫るなどは、すべて労働基準法違反です。
有給休暇など労働者の権利は学生バイトにも保障される……半年以上同じところで働いていれば、バイトも有給休暇をとれます。
大学としても、ブラックバイトから学生を守る取り組みを
学生バイトが正社員やフリーター並みの働き方を強いられ、学業に支障が出たり、ゼミやサークル活動にまともに参加できなかったりする事態は、学生本人だけでなく、大学教育、ひいては日本の未来にとっても損失です。
大学として、相談窓口の設置などの対策を……“アルバイトは学生生活の必修”といえるほどです。しかし、日本では高校生までの間に雇用のルールを学ぶ機会はほとんどありません。すべての大学で、労働法の専門家や弁護士、労働組合などと協力して、セミナーやガイダンスを開く、相談窓口を設置するなどのとりくみを広げることを提案します。
地域経済のまともな発展のためにも……学生のバイト先は、そのほとんどが地域に密着した店舗や職場です。違法・脱法行為で労働単価を引き下げることが当たり前になれば、その地域のパートなどの労働条件も悪化します。労働者を正当に処遇しようとするまじめな業者も、やっていけなくなってしまいます。ブラックバイトは、地域経済と地域社会にかかわる問題です。商工団体や自治体としても、その解消のために取り組むべき課題ではないでしょうか。
高い学費、貧弱 な奨学金制度、ブラックな働かせ方の横行―根本問題の解決を
根本的な解決のためには、学生がこれほどバイトに追われなくとも、お金の心配なく学べ、希望を持って大学を巣立っていける社会へと変える必要があります。
学費負担の軽減、安心して借りられる奨学金に……日本の大学の初年度納付金は国立で82万円、私立で平均131万円です。“高校入学から大学卒業までかかる費用は1人平均1000万円超”とも指摘されています。それにもかかわらず、奨学金は「利子つき」が主流――世界でも、こんな国はありません。OECD(経済協力開発機構)加盟国のほとんどの国で高校の授業料はありません。大学でも学費が無料か、あっても少額という国が多数です。大学の学費があり返済不要の給付制奨学金がないのは日本だけです。
大学を出ても、低賃金で不安定な非正規雇用や過酷な労働に追い立てられるブラック企業が横行するなど、若者を「使い捨てる」働かせ方が広がっています。学生バイトの労働環境を悪化させるだけでなく、「奨学金を借りても将来返す当てがあるのか」という不安を大きくしています。
日本政府は2012年9月、「高校や大学の教育を段階的に無償にする」と定めた国際人権規約の条項の「留保」を撤回しました。日本の高学費を引き下げていくことは、日本政府の国民への責任であり、国際的な公約です。給付制奨学金制度の創設は、自民党の選挙公約にもなっています。
学費負担の軽減、奨学金はせめて「無利子」とし、将来的には給付制を当たり前にすることなど、安倍政権に、国民と世界への約束を果たさせる、世論と運動をさらに大きく広げようではありませんか。
人間らしく働けるルールの確立を……働く人間を「使い捨て」にする社会は、若者から希望を奪い、貧困と格差を広げ、日本社会から活力を奪っています。人間らしい労働(ディーセント・ワーク)の実現こそ、世界の流れです。ブラック企業の規制、非正規で働く労働者の権利を守り正社員化をすすめる、長時間労働の是正など、人間らしく働けるルールの確立こそ求められています。
学生・若者の願いを掲げて、政治を動かす運動を起こしていこうではありませんか。日本共産党もみなさんとともに力を尽くします。