2014年6月3日(火)
福島第1 「凍土遮水壁」を着工
国と東電 汚染水対策で
東京電力は2日、福島第1原発の高濃度の放射能汚染水の増加を抑制するために、国と東電が計画している「凍土遮水壁」の工事に着手しました。計画についてQ&A形式でまとめました。
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Q そもそも、何のための計画なの?
A 現在、1〜4号機原子炉建屋などに地下水が流入し、溶融燃料を冷やすために原子炉に注入した水と混ざって、汚染水が日々増え続けている。凍土遮水壁は、1〜4号機を囲む形で地下に凍結管を埋め込み、周囲の土壌を数カ月かけて凍らせて凍土の壁をつくり地下水の流入を低減させる狙いだ。国と東電は、建屋内の止水工事を終える約7年後まで事業を続ける予定だ。
Q 工事の内容は?
A 約1メートル間隔で穴を掘って、深さ約30メートルまで凍結管を設置。冷却剤を循環させる配管と接続する。建屋群を取り囲むのに壁の総延長が約1・5キロメートルあって、合計1550本ほどを順次埋め込んでいく計画だ。建屋周囲は線量が高い場所が多く、作業員の被ばくが心配される。東電は、来年3月には工事を終えて凍結を開始したいと言っている。
ただ東電が3月に提出した計画の認可申請書を原子力規制委員会がまだ認可していないので、東電ができるのは工事の一部だけだ。
Q なぜ規制委は認可していないの?
A 検討会で、専門家から凍土遮水壁の安全性や効果、必要性について疑問が出されてきた。地盤沈下して建屋が傾かないか、汚染水が建屋から流出しないか、など深刻な懸念材料もある。
4月には規制庁が東電に24項目の質問に回答するよう要求し、議論が進んではいるが、水位管理や非常時の対応など課題が残っている。規制委は今回、地盤沈下の影響は小さいという東電の説明を認め、一部工事の「着手を妨げない」という対応で、課題を先送りしたかっこうだ。東電は認可を期待して、7月に本格工事を始める日程を示しているが、状況は不透明だ。
Q 先行して工事進めて大丈夫なの?
A 計画そのものに対しても、日本陸水学会が「より大きな事故を引き起こす可能性が高い」と指摘しているほか、規制委の検討会でも、従来の地盤改良技術と組み合わせられないかという意見が出た。解凍後に汚染水が流出することを心配する声も上がっている。
建設費319億円もの国費を投入して計画を進める意義があるのかという疑問もある。
Q 国の体制は?
A 国としては、汚染水対策を推進するのは資源エネルギー庁、安全面から検討・認可するのは規制委という役割分担で進めているが、安倍首相が宣言したような「国が前面に立つ」という姿勢はみえてこない。
資源エネ庁は、東電と工事を実施する鹿島建設まかせにみえる。規制委は、全国の原発の再稼働に向けた適合性審査に力を入れているのと比較して、今回の計画を含めて福島第1の事故収束への取り組みは、後手後手の東電を追認しているだけにしか思えない。
汚染水問題は切迫している。凍土遮水壁の構想は事故発生後、早い段階で出ている。にもかかわらず、計画からの撤退や大幅変更を含め、いろんな指摘が今ごろになって出ていることは問題だ。
国の姿勢の根本的転換が求められる。