2014年5月31日(土)
空自、米爆撃機を援護訓練
笠井氏が批判 集団的自衛権先取り
衆院委
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航空自衛隊のF15戦闘機の編隊が米アラスカ州の多国間軍事演習で、核攻撃も行う米軍のB52戦略爆撃機を援護する訓練に参加していたことが分かりました。日本共産党の笠井亮議員が30日の衆院外務委員会で、防衛省の内部資料をもとに明らかにしたもので、同省も事実関係を認めました。笠井氏は「集団的自衛権行使の先取りさえ行って、『海外で戦争する国』への大転換を強行することは許されない」と批判しました。
演習は米空軍主導で実施する「レッド・フラッグ・アラスカ(RFA)」。B52の援護訓練は、部内にのみ配布される月刊誌『飛行と安全』(航空幕僚監部発行)2012年7月号に掲載された体験記から判明しました。
体験記では小松基地(石川県小松市)のF15部隊所属の幹部が、「RFAにおけるOCA(攻勢対航空)ミッション中における出来事です。航空自衛隊のF15編隊は、B52の援護戦闘機として果敢に先陣を切って経路を啓開し、粘り強く戦闘を継続」などと参加時のようすを綴っています。
笠井氏は、「攻勢対航空」が敵国領土に侵攻し、相手航空戦力の撃滅を目的とした訓練であることを指摘。米爆撃機の護衛は、憲法9条が禁じる集団的自衛権の行使を前提とした訓練そのものだと追及しました。
防衛省の若宮健嗣政務官は、体験記が「防衛省の公式見解ではない」などと弁明。一方、この体験記が09年10月時の演習に参加した際のものである事実と、記事が「隊員の実体験」を記したものであることを認めました。岸田文雄外相は「訓練のありようは知らないが、憲法解釈の範囲内で実施されている」と放任する姿勢を示しました。
解説
憲法逸脱の“敵地空爆”
B52米戦略爆撃機の護衛訓練への航空自衛隊機の参加は、集団的自衛権の行使容認を先取りした準備が、日米の現場レベルで着々と進みつつある実態を改めて浮き彫りにしました。
笠井議員が示した空自隊員の体験記には、「(B52の)『爆撃成功、退却』の司令官の声を聞き取れず、帰投開始の時機を失してしまった」など、空自F15がB52と一体となって“敵地空爆”するようすが生々しく記されています。
そもそも「レッド・フラッグ・アラスカ」のような米軍主導の多国籍軍事演習に参加すること自体が、「専守防衛」を大きく踏み外すものです。
その上、米爆撃機の護衛訓練まで行うことは何を意味するのか。
戦略爆撃機は、歴代日本政府が「性能上専(もっぱ)ら他国の国土の潰滅(かいめつ)的破壊のためにのみ用いられる兵器」の一つにあげてきたように、自衛隊の保有は禁止されています。その爆撃機と一体となった訓練は、米軍主導の侵略戦争に参加する能力を得ることにつながります。
岸田文雄外相は笠井議員の追及に対し、「国民の命・暮らしを守るための(集団的自衛権の)議論を行っている」と弁明しました。しかし、この訓練が示すのは、日本の安全とも国民の暮らしともかけ離れたシナリオで進む日米軍事一体化の現状であり、戦争の最前線で米軍を支援する自衛隊の姿です。
現在は「海外で武力行使できない」という憲法上の歯止めによって共同訓練にとどまるものが、解釈改憲によって実際の共同作戦の遂行に道を開くことにさえなりかねません。
(池田晋)
B52戦略爆撃機 敵地深くに侵入する長い航続距離と、多量の爆弾を積む搭載能力を備えた米空軍の大型爆撃機。ベトナム戦争時にはじゅうたん爆撃を実施。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)とともに米国の核戦略の柱を成します。