2014年5月29日(木)
主張
大企業への減税
中小企業と国民には負担増か
安倍晋三政権は6月に決める新しい「成長戦略」と経済・財政運営の「骨太の方針」に向けて作業を進めていますが、最大の目玉にしている法人税減税をめぐり、大企業には減税する一方、中小企業や国民には増税を押し付けるものであることが浮かび上がってきています。大もうけしている大企業に減税してやり、ただでさえ経営や生活が苦しい中小企業や国民に増税するというのはまったく筋が通りません。それでなくても消費税が4月から増税され、来年10月からの再増税も計画されています。国民生活を破壊する異常な大企業減税はやめるべきです。
5兆円の減税財源のため
法人税減税はもともと安倍首相が指示して始まったもので、「世界でもっとも企業が活躍しやすい国」をめざす安倍政権の経済政策「アベノミクス」の柱です。財界主導で、新しい「成長戦略」や「骨太の方針」を検討している政府の産業競争力会議や経済財政諮問会議のほか、政府と自民党の税制調査会などで検討が進んでいます。
法人税減税は、国税と地方税を合わせた法人税の税率を現在の約35%(地方によって違い、東京都は35・64%)を25%程度に引き下げようというもので、経済財政諮問会議も「当面数年以内に20%台への引き下げ」を打ち出しています。税率を引き下げる代わり、政策減税や租税特別措置は見直し「課税ベース」を拡大することが検討されてきましたが、財界はむしろ研究開発促進減税などは恒久化すべきだと主張しており、大企業にとって至れり尽くせりの減税をねらっています。
法人税の実効税率を10ポイント引き下げるには少なくとも5兆円の財源が必要とされており、政府や財界がまず目を付けているのが中小企業など法人税を払っていない法人への課税強化で、そのために資本金や従業員数に応じて課税する法人事業税の外形標準課税や法人住民税の「均等割」の拡充です。外形標準課税は現在資本金1億円超の企業にしか適用されていません。対象を拡大すれば多くの中小企業にとって負担増になります。
こうした中小企業に課税を強化して大企業減税の財源を確保するやり方について、財界団体のひとつ経済同友会は、「低生産性企業」への保護をやめれば生産性が高い産業構造への転換にもつながると、増税の負担に耐えられず中小企業がつぶれてもいいと公言しています。財界・大企業の本音です。
もちろんそれだけでは法人税減税の財源は確保できないと、政府や財界が言い出しているのが、「税体系全体の改革の中で安定的な代替財源を確保する」ということです。経済同友会は、固定資産税や個人住民税、地方消費税の「拡充」を提案しています。要は、大企業減税のために国民全体に増税を押し付けるということです。
応能負担の原則破壊する
本来、税金は負担能力に応じて払うという応能負担が大原則です。大もうけを上げ、法人税を負担する能力もある大企業の減税のために、中小企業や国民に負担を押し付けるというのは本末転倒で、応能負担原則の破壊です。
大企業に減税しても、国民の暮らしや経済がよくなる保証はありません。国民に増税を押し付ければなおさらです。大企業減税の企ては中止させるしかありません。