2014年5月28日(水)
インド モディ首相が就任
宣誓式 パキスタン首相初出席
【ニューデリー=安川崇】総選挙で圧勝したインド人民党(BJP)首相候補のナレンドラ・モディ氏の就任宣誓式が26日、首都ニューデリーの大統領官邸で行われ、同氏が正式に第15代首相に就任しました。対立してきたパキスタンのシャリフ首相が他の南アジア諸国首脳とともに、史上初めて出席しました。
単独の政党としては30年ぶりとなる下院での過半数を獲得したBJPは、強い政治基盤を背景に5年の政権運営に乗り出します。経済立て直しを念頭に選挙で強調した「発展・成長」を、社会の低層も含めたかたちでどう実現するかが問われます。また多数派ヒンズー教徒を基盤とする宗派主義政党の首相として、同氏がイスラム教徒ら少数派の警戒感を払しょくできるかも課題です。
式典にはモディ氏が招待した南アジア地域協力機構(SAARC)の各国首脳が参加。アフガニスタンのカルザイ大統領やネパールのコイララ首相らの姿が見られました。インド大統領経験者や退任する国民会議派のマンモハン・シン首相も出席しました。
また新内閣の閣僚も同時に就任宣誓。主要閣僚ではラジナト・シンBJP総裁が内務大臣、弁護士で元商務相のアルン・ジャイトレ氏が国防・財務相に就任しました。
解説
両国に意味ある訪問
インド首相が自身の就任式に、パキスタンを含む南アジア各国首脳を招待するのは異例です。総選挙で予想を上回る大勝を収めたモディ氏は外交政策の第1弾として、周辺国との連携を打ち出した形です。総選挙で強調した「決断できる指導者」のイメージを印象付ける意向もあったとみられます。
モディ氏は南アジア地域協力機構の全加盟国に招待状を送りましたが、意図がパキスタンのシャリフ首相にあるのは明白でした。
3度の戦争を経験し、核武装してにらみ合う印パ両国の首脳にとって、相手国を訪問するのは簡単な判断ではありません。特にパキスタンのイスラム過激派組織がインド国内で大規模なテロ事件を起こして以来、対立は深まっています。実際、シャリフ氏は昨年6月、自身の就任式にインドのシン首相(当時)を招待する意向を示しましたが、インド側は出席を見合わせました。
今回モディ氏が投げたボールに対し、パキスタン与党報道官は当初から前向きな発言をしていました。しかし国内では、モディ氏のイスラム教徒虐殺への関与疑惑やヒンズー右派の政治姿勢への懸念などから、対印強硬派だけでなく与党内部からも反対論が噴出しました。
今も外交・国防政策に強い影響力を持つ軍との調整に時間を要したとの分析も広くみられます。しかし最終的にシャリフ政権は出席を決めました。
今回の訪印は儀礼的要素も強く、カシミール地方の領有権など両国間の主要な懸案事項について協議が進展する見込みは小さい。しかし両国の独立後初めて印首相の就任にパキスタン首相が立ち会い祝福したことは、今後の両国の外交関係の正常化へ向けて意味のある一歩だといえます。 (安川崇)