2014年5月25日(日)
きょうの潮流
世界保健機関が先日発表した長寿ランキングによると、日本が世界一です。統計は2012年時点のもので、日本人の平均寿命は女性が87歳で194カ国中トップ。男性は80歳で8位でした▼世界の平均寿命は70歳ですから、私たちが暮らす国は長生きのお手本です。心も体も健やかに、明るく穏やかに年を重ねていく。人生の先輩が日々をはつらつと生きる姿は、あとにつづく世代を励まし勇気づけます▼96歳で一人暮らしを楽しんでいる吉沢久子さんもそのひとりでしょう。最近、本紙日曜版で10年以上前から連載している「吉沢久子の四季折々」を一冊の本にまとめました。『いきいき96歳!』のタイトルから、もう元気が伝わってきます▼生活評論家の吉沢さんは心ゆたかに日常を過ごします。食を大切に、好奇心を失わず、学ぶ意欲をもって。老いと向き合いながら、新しい自分を発見する毎日。「暮らしのなかにある小さな幸せを、きちんと感じたい」▼生ある限り誰もが願う満たされた人生。しかし、いまの社会や政治がその思いをどれほど受けとめているか。若さに価値を求め、高齢を疎(うと)んじる風潮。生活から安心を奪う医療や介護、年金制度の崩壊。のしかかる増税▼長生きを敵視するような発言をする人物が政権の中枢に座っているのですから、推して知るべし。「政治は人間の心をもっと大切にして、一人ひとりの思いに寄り添ってほしい」と吉沢さん。社会全体で長寿を喜べる社会になってこそ、世界一も輝くことでしょう。