2014年5月24日(土)
米欧版TPP 批判強まる
交渉不透明、安全脅かす
欧州議会選の争点に
イギリスとオランダを皮切りに投票が始まった欧州議会選挙。米国と欧州連合(EU)が進めている環大西洋貿易投資連携協定(TTIP=米欧版TPP)への批判が強まり、一つの争点となっています。 (パリ=浅田信幸)
選挙投票日を1週間後に控えた今月17日、欧州の10を超す国でTTIPに反対する行動が市民団体などによって取り組まれました。
反TTIP勢力は米欧交渉の「不透明さ」を批判。市民に内容を明かさない交渉の在り方について、米国家安全保障局(NSA)による盗聴問題を引き合いに出し、「(EUの交渉内容を)知るべきでないのは、交渉相手の米国でなく、欧州の市民なのだ」と皮肉る報道もありました。
交渉では貿易と投資に関するあらゆる「障壁をなくす」ことがうたわれており、成長ホルモンを投与された牛肉、遺伝子組み換え作物、医薬品や自動車などの安全基準、プライバシーの保護まで対象となります。
これに対し、仏南部のプロバンス・アルプス・コートダジュール地域圏(PACA)議会は2月、共産党と左翼党らで構成される左翼戦線と緑の党のイニシアチブで同圏を「(合意)適用除外地域」と宣言する決議を採択しました。
PACA農民組合のサビニ代表は「フランスの農業が第1の犠牲になる」と交渉を批判。緑の党の欧州議員候補リバジ氏は「衛生基準をつくり予防原則を打ち立てるEUの努力全体を危うくする」と警告しています。
もう一つの問題は、企業と国家の紛争を解決する仕組みの投資家対国家紛争(ISD)条項です。同条項は、ある国の政策や法律が企業の投資を妨げたり、予定された利潤を損なう場合、企業が国を提訴できる仕組みを定めるものです。
これまでの例では調停機関を構成する法律家の多くが多国籍企業の顧問弁護士を務めた経験者だといいます。
ISD条項は「国民、労働者、国家に対するミサイル」(仏共産党ルイヤリク欧州議員)と非難し、TTIP交渉そのものの停止を要求する声が強まっています。