2014年5月22日(木)
主張
大飯原発差し止め
再稼働阻止する大きな流れに
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全性が確保されていないと、住民が再稼働の差し止めを求めていた裁判で、福井地裁(樋口英明裁判長)が画期的な判決を出しました。住民側の訴えを認め、関西電力に運転再開の差し止めを命じたのです。
裁判所が原発の運転差し止めを命じたのは、2006年に金沢地裁が北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)に命じて以来で、東京電力福島第1原発事故後、初の判決です。関西電力は再稼働を狙い、原子力規制委が審査を進めていますが、国も関電も規制委も司法の判断を尊重すべきです。
安全性が確保できない
大飯原発3、4号機は昨年9月定期点検のため運転を停止しました。原発周辺の住民は安全性が確保されていないと、再稼働の中止、運転の差し止めを求めてきました。住民がとくに問題にしたのは、大飯原発でおきると想定される地震の揺れ(基準地震動)を関電が過小評価しており、万一の場合に使用する外部電源や原子炉冷却用のポンプなどの耐震性が不十分で、東京電力福島原発で起きたような炉心損傷に至る可能性があるということです。
実際、原子力規制委の審査でも、関電は当初、原発の北西側の若狭湾に延びる二つの断層と陸側にある断層との三つの断層が連動して動く可能性を認めず、規制委の指導で訂正させられています。また、地震が起きる断層の深さについても当初地下4キロと想定し、規制委に修正を求められています。
福井地裁の判決が、大飯原発の地震のさいの冷却機能や放射性物質の閉じ込め機能に欠陥があると認め、大飯原発の安全性について、「確たる根拠のない楽観的な見通しの下にはじめて成り立ちうる脆弱(ぜいじゃく)なもの」と断言したのは、関電の被害想定や対策では事故が防げないことを認めたものです。
判決は冒頭、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然(しか)るべきである」と指摘しました。判決が、人格権が侵害される恐れがあるときはその侵害行為の差し止めを請求できると断言したのは、大飯原発の運転に限らず、きわめて重いものがあります。
大飯原発については今月はじめ、大阪高裁が規制委で審査中であることを根拠に再稼働中止の仮処分申請を却下しました。しかし福井地裁判決は、福島原発事故後、司法として安全性についての判断を避けるのは裁判所の責務を放棄することになるとのべ、人格権にもとづく安全性の判断は規制委などの安全審査には左右されないと、その考えを退けています。福井地裁の判断は重大です。
原発再稼働の中止を
現在全国では、原発の運転差し止めを求める訴訟が十数カ所であります。全国で48基ある原発はすべて停止していますが、そのうち18基の原発について電力会社などが再稼働を申請し、原子力規制委が審査を進めています。
今回の福井地裁の判決を重く受け止めるなら、原発再稼働の動きは中止すべきです。国民の人格権を守る立場で再稼働をやめさせ、「原発ゼロ」を決断するかどうか、安倍晋三政権が問われます。