2014年5月19日(月)
NHK日曜討論
山下書記局長の発言
日本共産党の山下芳生書記局長は18日のNHK番組「日曜討論」で、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認などについて、与野党の幹事長と討論しました。
武力攻撃に至らない「グレーゾーン」への対応として、与党は「一日も早く法整備を」(自民党の石破茂氏)、「具体的に議論しなければいけない」(公明党の井上義久氏)と述べ、野党の民主、維新、みんななども法整備の必要性を主張しました。山下氏は次のように語りました。
「グレーゾーン」への対応は海保など警察権の行使で
山下 海上保安庁など警察権の行使で対応すべきであり、自衛隊が出て行けば、かえって戦争を始めることにもなりかねない。反対です。尖閣問題で大事なのは、やはり外交交渉を通じて、日本の領有の正当性について理を尽くして相手を論破するぐらいの構えで主張することです。
私たちは志位委員長が中国大使館に行き、大使に党の立場を直接訴えました。日本政府は残念ながら、領土問題は存在しないということで直接主張できていません。言うべきことを言わないでもっぱら軍事的対応というのは、解決どころか緊張を高めると思います。
安倍晋三首相の私的諮問機関である「安保法制懇」が15日に提出した集団的自衛権の行使容認を求める報告書について、公明党の井上氏は「これまでの憲法解釈を変える必要があるのか、具体的に検討したい」と語り、民主党の大畠章宏氏は「すべて否定するわけではない」、維新の松野頼久氏は「極めてわれわれの考え方に近い」、みんなの水野賢一氏も「行使はできると基本的に考える」と表明しました。「必要最小限度」のものに限定するかのように見せる安倍首相の記者会見での説明について、山下氏はこう指摘しました。
「母や子守るんだ」というが実際は若者に血を流させる
山下 安倍総理がパネルで説明された在外邦人の救出は日本政府が責任をもってやるべきことであり、米軍に頼むことはほとんど想定されないと思います。非現実的な事例を持ち出して集団的自衛権の行使を認めたらどうなるか。一番現実的なことは、アフガン戦争やイラク戦争のような戦争で自衛隊が米軍と一緒に武力行使をするということです。
この二つの戦争で自衛隊は派兵されましたが、海外で武力行使してはならないという憲法上の歯止めがかかっていました。この歯止めを取り外すのが安倍総理の狙いです。この歯止めを外せば、自衛隊員が戦闘地域に行って武力行使をするということになります。
安倍総理は「お母さんや子どもたちを守るんだ」とおっしゃいましたが、実際は若者たちに血を流させることになるではないか。石破さんは昨日の新聞で「自衛隊が他国民のために血を流すことになる」と述べておられましたが、安倍さんより石破さんの方が正直だなと思いました。
自民党の石破氏は山下氏の指摘を受け、「集団的自衛権が行使できないというのは世界の中で日本だけ。日本が急迫不正の武力攻撃を受けたら、アメリカの若者は血を流す覚悟をしている」と述べ、自衛隊員も米兵と同様に命をかけるべきだとの考えを示しました。
山下氏はこう語りました。
アメリカの戦争に全部つき従う「全面参戦宣言」
山下 そもそも、集団的自衛権の行使とは何か。日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力行使をするということにほかなりません。これは海外で武力行使してはならないという憲法の大原則を否定するものですから、国のあり方が変わるわけです。
(必要最小限度に)限定といいますが、例えば「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」と誰が判断するのか。時の政権です。安倍総理が判断するわけです。何の歯止めにもならないと思います。
しかも、安保法制懇の報告書を見ると、日米同盟の信頼関係が損なわれる場合も「我が国の安全に重大な影響を及ぼす」とされている。要するに、アメリカの戦争に全部つき従うことになる。これまで日本がアメリカの武力行使に反対したことは一度もありません。すべて認めてきた国が憲法の歯止めまで取り払ってしまったら、いつでもどこでも参戦できる国になる。歯止めどころか、「全面参戦宣言」だと思います。
これに対し、維新の松野氏は「何でもかんでもアメリカの戦争に追随するかのような誤解を与えるべきではない」と述べ、自民党に助け船を出しました。
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認について、山下氏はこう述べました。
大国による侵略・干渉が集団的自衛権による戦争
山下 なぜ憲法ができたのかをしっかり見る必要があると思います。かつて日本の侵略戦争によって310万人の日本人、2000万人のアジアの人々が犠牲になった。この痛苦の反省に立って、いまの日本国憲法第9条ができた。9条は1項で、武力による威嚇と武力の行使は放棄すると明記しただけではなく、2項で、戦力を持たない、交戦権を認めないと決めた。
(政府は)自衛隊は戦力でない、自衛のための必要最小限度の実力とずっと説明してこられた。自衛のための必要最小限度の実力が、自国が武力行使を受けていなくても海外で他国のために武力行使をすることができるはずがない。憲法9条2項は、どこから見ても集団的自衛権の行使なんてできないというのが当たり前の読み方です。
それから、国連憲章51条で集団的自衛権が認められているといいますが、そのもとで行われた戦争はアメリカのベトナム侵略、旧ソ連のチェコやアフガン侵略です。大国による小国に対する侵略、干渉戦争が集団的自衛権の名による戦争です。こんなものに参加しない方がいいんです。
報告書は、「軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加」についても「多国籍軍」に「制約」なく参加することを容認しました。山下氏は次のように語りました。
多国籍軍参加へ道開くことに 憲法9条がなくなってしまう
山下 集団安全保障ですが、石破幹事長は昨日、テレビ番組で武力行使を伴う多国籍軍への参加について「日本だけが参加しないというのは、やがて国民の意識が変わるときに、また政府対応が変わるかもしれない」と述べ、将来の参加の可能性に言及しました。総理の説明と食い違いますが、石破さんの言っていることの方が本音に近いと思います。
集団的自衛権の行使を認めれば、海外での武力行使は憲法違反でないことになります。多国籍軍への参加もそこから道が開かれてくることになる。集団的自衛権の行使も多国籍軍への参加も、ともにできるとなれば、憲法9条がなくなってしまうのと一緒です。
加藤紘一自民党元幹事長は「第2次大戦で失墜した日本への世界の信頼は、憲法9条によって回復したところが大きい」と、「しんぶん赤旗」(日曜版)でのべられました。同感です。憲法9条の平和主義を一内閣の解釈で壊してしまうことなど絶対に許されません。
これに対し、石破氏は、将来の多国籍軍参加について「未来永劫(えいごう)ないとは申しません」と否定しませんでした。
今後の国会審議について、各党とも国会での十分な審議を求めました。
山下氏は最後に次のように決意を述べました。
力をあわせて戦争する国づくりにストップを
山下 NHKの4月の世論調査は、1年前と比べて憲法9条を変える必要があるという人が10ポイント減り、必要ないという人がぐっと増え、逆転しました。集団的自衛権も行使反対が増えています。このみなさんと力をあわせて安倍政権による戦争する国づくりの暴走にストップをかけたいと思います。