2014年5月18日(日)
主張
教育委員会改悪法
押し通す道理はまったくない
自民・公明の与党などは、政治勢力が教育を支配できるようにする教育委員会改悪法案を衆院文部科学委員会で賛成多数で可決しました。教育委員会の独立性を奪い、侵略戦争美化の「愛国心」教育や異常な競争主義を押し付ける法案の危険性が浮き彫りになるだけでなく、下村博文文科相が答弁の訂正・撤回を連発し、法案の欠陥ぶりも明らかになっています。法案を押し通すことに何の道理もありません。
教育への政治支配の危険
法案の一番の心配は、文科相や自治体首長の政治的主張によって教育が支配されることです。
現行制度は、住民代表の教育委員たちが首長から独立して自治体の教育行政をすすめる建前です。それを法案は、首長に自治体の教育「大綱」を制定する権限を与え、その大綱に教育委員会が「意を用いる」ことを義務付けています。しかも、大綱は国の方針を参考にすることが義務付けられています。
大綱に「愛国心教育を推進する」など教育の内容に踏み込んだことも書き込めるのではないかとの日本共産党の宮本岳志議員の質問に、下村文科相は「教育内容にかかわる事項を記載することが妨げられるものではない」と明言しました。教育委員会の独立性を奪う法案の大きな狙いの一つが、侵略美化の「愛国心」教育を子どもたちに押し付けることにあるのは明らかです。
政府が法案の提出理由にあげた教育行政の「責任体制の明確化」も重大なごまかしであることが明らかになりました。「いじめ対応」などを例に執行責任が教育長にあるか、教育委員会にあるかは、現行法でも改悪法案でも変わらないと指摘し、「責任体制は同じではないか」という宮本議員の追及に、下村文科相は「わかりやすさの整理をおこなった」と答えるだけで、法案が「責任体制」を明確化するものとはいえませんでした。
日本弁護士連合会は政府のいう「責任の所在の不明確さ」について、現行法でも「教育委員会、教育長、教育委員長の権限・責任は明確に定められている」と批判する意見書を出しました。法を変える根拠は崩れてきているのです。
日弁連の意見書は法案について、政治的中立性確保など「教育の自主性・自律性が守られ、子どもの学習権・成長発達権が確保される上で極めて重要」な基本的理念を損なう恐れが強いと指摘しています。日本教育法学会も撤回・廃案を求める声明を出しています。
全国連合小学校長会と全日本中学校長会も会長の連名で、「政治的中立性の確保」が必要だとし、「首長の個人的な思想・信条により教育施策が歪(ゆが)められることがないよう歯止めをかける制度」を検討するよう要望書を提出しました。
法律の専門家や学校関係者が、法案の問題点を指摘したり、要望を表明しているのです。政府・与党はこうした声にも耳を傾け、改悪強行をやめるべきです。
国民的な共同を広げて
日本共産党は法案に反対する国民的共同を呼びかけ、幅広い人々との対話を進めています。「戦争をする国」づくりのために教育を変えようという安倍政権のたくらみを許さず、憲法が保障する教育と教育行政の自主性を守るため、運動を広げることが急務です。