2014年5月15日(木)
旧日本軍の残虐性で新資料
中国・吉林
中国吉林省長春市にある吉林省档案館(とうあんかん、公文書館)は4月下旬、旧日本軍の中国侵略に関する新しい資料を公表しました。旧日本軍の報告や電話記録、手紙などがあり、日本による侵略の生々しい姿を示すものとして注目を集めています。 (長春〈中国吉林省〉=小林拓也 写真も)
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1945年8月の敗戦時、長春(当時は「満州国」の首都・新京)にいた旧日本軍は証拠隠滅のため、日本の侵略に関わる大量の資料を焼却しました。焼却が間に合わないものは、穴を掘って埋めました。
53年11月、旧日本軍の憲兵隊司令部跡に埋められた大量資料が発見されました。档案館は資料の保管と整理を行い、数年前から約60人の研究員が翻訳や研究を進めてきました。
資料は全部で10万点以上。今回発表されたのは、南京大虐殺や「慰安婦」、細菌兵器の研究・開発に従事した関東軍「731部隊」などに関わる89点です。
4月28日に日韓など外国メディアの前で記者会見した穆占一(ぼくせんいち)副館長は、この時期に資料の一部を公開した理由について、「近年、日本の右翼勢力が侵略の歴史を否定し美化し続けている」と強調。「今後も研究のスピードを速め、さらに多くの研究成果を発表したい」と述べました。
「慰安婦」を集める送金記録
資料のうち、南京大虐殺(1937年)後の治安状況に関する憲兵隊司令官・大木繁の報告は、「慰安婦」の生々しい実態を明らかにしています。
38年2月19日の報告によると、同月1〜10日には南京に2万5000人の日本兵が駐屯し、「慰安婦」は141人でした。
また、南京周辺の鎮江にあった慰安所にも109人の「慰安婦」がいました。日本兵は同様の期間に、のべ5734人が慰安所を利用。「慰安婦」1人が10日間で53人の日本兵に対応させられた計算になります。さらに28日の報告では、11〜20日の利用者はのべ8929人に増加し、「慰安婦」1人当たりの対応は82人になります。
また、中国東北地方に日本がつくった「満州国」の満州中央銀行の電話記録は、44年11月〜45年3月に「慰安婦」を集める資金として、当時の金額で計53万2000円を送金したと記載しています。档案館は「慰安婦」制度が日本の国家的行為だという重要な証拠だと強調しました。
「豆腐のように」刺し殺した
当時の日本兵が中国から日本にいる家族に宛てた手紙の内容なども公開されました。これらの手紙は検閲で没収されたものです。
その中には、「銃剣で突くと豆腐のように突けるのです。一、二回突くと手をぶるぶるふるわせます」と中国人を殺したときの様子を記載したものや、「僕も殺人何犯かわからぬ。然し(しかし)戦場は治外法権だからな」と書かれたものもありました。
これらの資料について、穆副館長は「日本軍国主義が中国を侵略し、中国人民を虐殺し、人権を踏みにじった動かぬ証拠だ」と強調しました。