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2014年5月8日(木)

2014 とくほう・特報

安倍流の「大学改革」 学問の自由あぶない!

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 安倍政権は、「大学の自治」の要をなす教授会の権限をなくし、学長の権限を強化する学校教育法・国立大学法人法改定案を国会に提出しました。5月中旬にも審議入りする構えです。「日本の大学と民主主義は重大な危機にある」と大学関係者から激しい反対の声が上がっています。

 (土井誠 党学術・文化委員会事務局次長)


大学自治壊す

教授会が審議機関から学長“諮問機関”に変質

 大学は13世紀に欧州で生まれ、世界各国で高等教育機関として発展しました。その歴史の中で、国家権力の干渉から学問研究と教育の自由を守るために「大学の自治」を形成してきました。これは世界共通の原則です。

 日本では、憲法第23条に「学問の自由は、これを保障する」と定められ、「大学の自治」の法的根拠となっています。

 学校教育法は、これを具体化し、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」(第93条)と定めています。

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 「大学のあり方を根底から変えてしまう。もう大学ではなくなってしまう」。4月24日、日本私立大学教職員組合連合中央執行委員長の丸谷肇鹿児島国際大学教授は、学校教育法改定に反対するアピール署名の記者会見で力を込めて訴えました。署名は、この1カ月で大学教職員、学生など3000人を超えて広がっています。

 学校教育法改定案は、93条を根本的に改変して、教授会を大学運営の審議機関から、「学長が必要と認める場合にだけ意見を述べる」機関にかえます。つまり、諮問機関への変質です。

 教授会は現在、カリキュラムの編成をはじめ教員の業績評価・採用、学部長の選任、学部の廃止・改組などを審議しています。

 丸谷氏は「学長が決定する際に教授会が意見を述べるものとして法案が例示したのは『学生の入学、卒業および課程の修了』と『学位の授与』だけ。つまり、大学の入り口と出口だけ。肝心の大学の4年間については、学長が意見を聞く必要がないと判断すれば、教授会は意見も言えない」と指摘します。「学生に直接教える教員が、カリキュラムの編成すら、ものが言えないのなら、学生を4年間で一人前の社会人に育てることなんてできない」と憤ります。

 24日の記者会見では、東京大学元副学長の広渡清吾専修大学教授が「大学は主体的に取り組むところ。人に言われてやるところではない」と発言。「教員が教授会で議論しても、意見を聞かれるだけで、大学運営に主体的にかかわれない。教師が主体的でなくて、いったい主体的な学生が育つのか」と法案を批判しました。

「学長独裁」に

“政府いいなり増える” 選挙自体廃止の動きも

 国立大学法人法改定案では、各国立大学で学長を選ぶ機関(学長選考会議)が選考の基準を決めて公表するとしています。文科省は、「大学のミッション(使命)の実現にむけて大学を委ねられる」学長像を明確に示した選考基準になると説明しています。この基準にあわないと、教職員の投票(学長選挙)で1位でも学長になれなくなります。

 学長選考会議が、学長選挙で1位になれなかった候補者を学長に選出する大学が増えていることが問題になっています。山形大学もその一つで、7年前に結城章夫文部科学事務次官が学長に選出されました。結城学長は昨年、情報漏えいで原子力規制庁審議官を更迭された人物を独断で教員に採用する「事件」をおこしています。

 当時、同大地域教育文化学部長だった那須稔雄氏によると、教授会が人事に反対する決議をあげましたが学長はゴリ押ししました。

 那須氏は「昨年、ミッションの再定義という書類をつくったが、文科省から何度も書き直しを命じられた。このミッションにそった学長を選ぶとなれば政府いいなりの学長が増える」と指摘します。

 法案を先取りして、学長選挙そのものをなくす動きもあります。京都大学では、総長(学長)選考会議の学外委員による総長選挙廃止の動きがありましたが、職員組合などの運動で、先月23日に総長選挙の存続が決まりました。(下の図)

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 政府は法案提出の理由を、学長のリーダーシップを確立し、大学改革を推進するためと説明しています。

 これに対し広渡氏は「教授会で議論が進まず、改革しようとしても一歩も踏み出せないというのは、みんながまだ納得していないから。学長のリーダーシップが大事ならば、学長がみんなを納得させる案を出して十分議論して、合意形成をして、大学を改革するのが真のリーダーシップだ」と批判しています。

 教職員が支持しない人が学長になり、その学長が決める方針に教授会は従うしかないというのでは、「学長独裁」と言わざるをえません。しかも、その学長に政府いいなりの人物が就くとなると、もはや大学とは言えないものになります。

 国の政策に批判的な教員が排除される危険もあります。京都大学の西牟田祐二教授は、「経済学分野では、マルクス経済学の影響を弱める動きがある。教育課程の編成を学長が教授会の意見を聞かずにできるようになれば、マルクス経済学の排除もおこりかねない。あるシンポジウムで経済同友会副代表幹事が『マルクス経済学を学んだが役に立たなかった』などと暴言を吐いた。こういう考えの人物が学長になったら大変なことになる」と危惧しています。

 私立大学では、理事長の暴走を助長する危険もあります。創造学園大学では、教授会などの内部チェックが働かず、専断的で放漫な理事長の経営の結果、債務超過に陥り、設置者の堀越学園は文科省から解散命令を受けました。丸谷氏は「法案で教授会のチェック機能が外されると、こうした事例はますます増える」と危惧します。

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 安倍内閣による、「大学の自治」破壊への暴走は、財界の強い要望を受けてのものです。財界は、「グローバルに活躍する人材」「イノベーション(技術革新)をつくりだす人材」が必要だとして、大学の再編・統合や学費値上げを求めています。こうした大学をつくるために、日本経団連は教授会の審議事項を狭めるための法改定を求め(13年12月)、経済同友会は教授会の諮問機関化を提言(12年3月)しています。

 私大教連の丸谷氏は「法案は、財界が求める大学のスクラップ&ビルドをねらってのもの。なんとしても廃案に追い込みたい」と、署名への賛同を呼びかけます。

 

 署名は、全国大学高専教職員組合や日本私大教連のホームページで受け付けています。

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