2014年4月27日(日)
主張
この夏の電力需給
「原発ゼロ」実現へ条件生かせ
この夏の電力需給が、全国48基の原発がすべて停止したままでも「不足」を回避できる見通しであることが、経済産業省の調査で明らかになりました。原発再稼働に動く電力業界やそれを推進する安倍晋三政権の口実を掘り崩すものです。東京電力福島第1原発の重大事故も収束していないのに、原発再稼働へ動くこと自体許されません。「原発ゼロ」実現への条件を生かし、原発は停止したまま再稼働せず廃止に向かうべきです。
「3%」の余力を確保
経済産業省が明らかにした発電能力と電力需要を比較したこの夏の電力需給見通しによると、全国の原発が停止したままで再稼働していない前提でも、供給予備率は北海道、東北、東京の東日本3社で合計6・1%、電気の周波数が違う西日本の中部、関西、北陸、中国、四国、九州の6社で合計3・4%となっています。供給予備率が最も低いのは西日本の関西と九州ですが、電力に余裕がある東日本からの融通を計算に入れれば、安定的に電力を供給できる「3%」を確保できる見通しです。
3年前の福島原発事故後、定期点検などで相次いで停止した原発は昨年の秋以降、全国で1基も運転していません。原発が停止したままでも、この冬の電力は賄えました。それに加え、昨年夏は運転していた関西電力の大飯原発(福井県)が停止したままなのに、この夏も電力が賄える見通しです。原発は再稼働させず、すべて停止したままでも電力が賄えることを証明したのは明らかです。
にもかかわらず、電力業界や財界団体は、「電力不足」や「再値上げ」の「懸念」を持ち出して原発再稼働に懸命です。なかでも声高なのは関西電力が中心になった関西経済連合会(関経連=関電会長が関経連会長)や九州電力が大きな影響力を持つ九州経済連合会です。しかし、関電や九電が電力供給に余裕がないのはこれまで原発への依存度が高すぎたからで、利用者につけ回しする前にまず原発依存を反省すべきです。
しかもその関電や九電でも東日本からの融通で電力を確保できる見通しです。電力会社がお互いに電力を融通しあうのは当然のことで、原発を再稼働しなければ電気がとまるようにいうのは成り立ちません。天然ガスなどの火力発電を増やせば経営を圧迫するなどというのは、地域独占で大もうけを続けるための勝手な言い分です。
安倍政権がこうした電力会社の主張にこたえて原発再稼働に前のめりになり、まず九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働に向けた審査を優先的にすすめようとしているのは問題です。川内原発は事故が起きた場合の福祉施設からの避難計画が整っておらず、再稼働は文字通り国民の安全より企業のもうけを優先させたものです。
再稼働支持は国民の少数
安倍政権が「エネルギー基本計画」で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発の再稼働に前のめりの態度を示しても、国民の間では再稼働を支持する声は少数です。「毎日」の調査(21日付)では原発を続けることに「賛成」が36%で「反対」が55%、「日経」の調査(同日付)でも「賛成」が32%で「反対」が55%です。
原発は再稼働せず停止したまま廃止に向かってこそ、こうした国民の声にもこたえるものです。