2014年4月23日(水)
全国学力テストを実施
学校別結果 公表可能に
文部科学省は22日、小学6年と中学3年を対象とした7回目の全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)を実施しました。昨年に続き、国公私立のすべての小中学校を対象にした全員参加方式で、全国3万校余りの約224万人が、国語と算数・数学の2教科のテストを受けました。
テストは例年通り、「基礎知識」を問うA問題と、「活用力」を試すB問題の2種類。文科省は「調査により測定できるのは学力の特定の一部分」「学校における教育活動の一側面」とするものの、8月下旬をめどに都道府県別の平均正答率(平均点)を公表するとしています。
今回から、市町村教育委員会が学校別結果を公表することや、都道府県教育委員会が市町村教委の同意を得て市町村別や学校別の結果を公表することが可能とされました。その場合、平均点などの数値のみの公表は行わず、分析や今後の改善策を示すこと、学校側と事前に相談することなどを条件としています。
これまでの全国学力テストの「実施要領」では、「序列化や過度な競争が生じるおそれ」などがあるとして自治体による学校別結果の公表は禁じていました。昨年11月公表した今年度の「実施要領」で初めて、その方針を転換したものです。
全国学力テストは2007年度、第1次安倍内閣の時に本格開始。民主党政権下で抽出方式になりましたが、昨年度4年ぶりに全員調査に戻されました。
解説
「点数がすべて」大きな弊害
第1次安倍政権が始めた「全国学力テスト」は「点数がすべて」という点数競争を全国に広げました。今年度から市町村教委による学校別結果の公表が可能とされましたが、すでに大きな弊害がでています。
「学力テスト対策」として、春休みの宿題、過去の問題などを使った朝・放課後・授業時間の補習が行われ、地域や学校間競争が激化し、「平均点をあげろ」と追い立てられる状況が各地に広がっています。「平成26年度(2014年度)までに(全国学力テストで)『全国平均以上』を目指そう!」と、教育委員会のホームページに“スローガン”を掲げて競争をあおる自治体まででています。
大阪市は昨年10月、全国学力テストの学校別成績公表を実質義務化。橋下徹市長は「学校選択の一つの要素」とし、平均点競争に追い込む姿勢をあらわにしました。ほかにも一部首長が、平均点での学校ランキングの公表など「もっと競争せよ」とあおり始めています。
都道府県レベルや市町村レベルの「学力テスト」でも、さまざまな影響がでています。「小学校校長らが子どもの答案を改ざんした」「間違った答えを書いた子どもに先生が指さしして気づかせる」「特定の子どもの答案を集計から除く」など―。どれだけ子どもの心を傷つけるかは明らかです。
しかし、いまのところ教育委員会の多くは学校別の結果公表に慎重です。こうした教育委員会の権限を弱め、国と首長の政治的圧力で、「全国学力テスト」にもとづく競争の体制をつくろうというのが安倍政権です。この狙いをおしとどめ、国連子どもの権利委員会から何度も勧告されている「高度に競争主義的な学校環境」を是正させる取り組みが大切になっています。 (中東久直)