2014年4月23日(水)
主張
全国学力テスト
点数競争で子どもの力育たぬ
文部科学省は22日、小学6年と中学3年の全員、約224万人を対象に7回目の全国学力テストを実施しました。文科省は今回から学校別の結果公表も認めており、点数競争に拍車がかかることが危惧されます。学校教育をゆがめる全国学力テストの弊害は回を重ねるごとに明らかになっています。
文化祭活動も犠牲に
全国学力テストは、学校で普通に行われるテストとは違います。通常のテストは授業でやったことを子どもたちがきちんと理解しているか、誰がどこでつまずいているのかを確認し、指導に役立てられています。ところが全国学力テストは、そういうことにはまったく役立ちません。結果が示されるのは実施から数カ月後で、子どもたちがどんなテストだったか忘れたころです。返ってくるのは答案用紙ではなく、問題ごとにできたか、できなかったかを示した表です。子どもは自分がどこでどう間違えたか分からず、教師も具体的な指導ができません。
重大なことは、全国学力テストによって、平均点を一点でもあげて競争することが目的化し、教育をゆがめることです。多くの教育委員会が平均点アップを求めて学校を締め付け、現場では管理職が「昨年の平均点を超えろ」「県内平均より上に」と檄(げき)を飛ばしています。子どもは学力テストの過去の問題や類似問題を繰り返しやらされ、テストに関係ない授業や文化祭などの行事が削られています。子どもたちはテスト対策にうんざりし、苦痛を感じています。学ぶことは本来、新しいことを知る楽しい営みのはずなのに、その喜びが奪われているのです。
文科省は学力テストの結果で示されるのは「学力の特定の一部分」「学校における教育活動の一側面」だとしています。それなのに都道府県別の結果を公表して競争をあおっています。これでは仮にテストの点が上がっても、他の課題がおろそかになり、本当に豊かな学力を育てることはできません。
友達と一緒に何かをやりきる、さまざまな考え方を出し合って真理を見つける、学んだことを自分の生き方や地域と結びつけて考える―。日本の教師たちは子どもたちにこうした力を育てることを大切にしてきました。ところが学力テストの点数を上げることが最重要の課題とされる中で、そうした実践ができにくくなっています。
文科省は全国学力テストの学校別の平均点公表を、「序列化や過度な競争につながる」として禁止していましたが、今回から各自治体の判断でできるようにしました。いまのところ教育委員会の多くは学校別の公表に慎重です。しかし、安倍晋三政権は「教育委員会改悪法」で教育委員会の独立性を奪い、公表を進めようとしています。全国の学校が序列化され、競争が一層激しくなる恐れがあります。「うちの学校はだめな学校」などと傷つくのは子どもたちです。
廃止して条件整備を
全国学力テストの予算は昨年度より7億円も増え、61億円に上っています。そんなお金があるなら、教育条件の整備に回すべきです。教職員を増やし、少人数学級にする、学習が遅れがちな子どもへの支援を手厚くするなど、一人ひとりの子どもに目が行き届く条件整備にお金をかけることこそ必要です。