2014年4月22日(火)
きょうの潮流
日本人でありながら日本より韓国でよく知られた人物がいます。戦前から人権弁護士として知られた布施辰治(1880〜1953年)です▼日本の植民地であった朝鮮に船で4回訪れ、弾圧を受けた独立運動家の弁護や農民運動の支援に奔走しました。「日本版シンドラー」とも評され、10年前に韓国政府から「建国勲章」が授与されました▼韓国の羅州(ナジュ)市には、抗日農民運動記念碑が建てられ、「日本人弁護士布施辰治」と刻まれています。植民地経営の国策会社によって土地を買収された農民から、血書を添えて返還訴訟を依頼され、解決にあたりました▼訴訟の準備のために調査に入ったときには、官憲の目をごまかし農民と接触。「来たれ、来たりて聞け、今夕の大講演会を」のポスターを見て集まった農民を励ましました。植民地経済が農民を生活苦と海外への渡航に追い込んでいることを見抜き、植民地支配を告発しました▼昨年心ないヘイトスピーチが頻発した新宿区大久保の高麗博物館で「布施辰治展」が開催中です。日本人の弾圧犠牲者の弁護だけでなく、関東大震災時の朝鮮人虐殺の糾弾、独立を求める留学生の弁護など、植民地民衆への数々の献身的な活動に驚かされます▼勲章の授与に際して「日本人に与えるのは国民感情に合わない」という意見もありましたが、伝達のとき韓国大使が、布施の孫の大石進氏に言いました。「他国民を愛するものこそ、自国民を愛することができる。布施こそは日本の真の愛国者である」