2014年4月20日(日)
安倍政権がねらう医療・介護改悪
社会保障制度変質させる
「医療・介護難民」増やす
安倍内閣が国会に提出し、衆議院で審議が始まった医療・介護総合法案―その中身は、多くの高齢者を介護サービスの対象から除外し、入院患者を強引に「在宅」に戻していくというものです。医療をいっそう受けられなくし、介護保険をさらに使えない制度に変質させる大改悪です。
「地域包括ケア」―国の責任放棄では「絵に描いたもち」に
政府は、病院や施設から追い出されても、地域で医療や介護が受けられる「地域包括ケア」を市町村が中心になってつくるといいます。しかし、市町村に要支援者向けサービスを行わせることについても、全国515の保険者(市町村や広域連合)の31・4%が、「不可能」だと回答しています。(中央社会保障推進協議会調べ)
現在、訪問看護の看護師は全体の2%、3万人しかおらず、介護職員は100万人も不足しています。「地域包括ケア」の目玉である「定期巡回サービス」を実施している自治体はわずか1割です。
国の予算削減ありきで在宅に押し戻していけば、だれもが必要な医療・介護サービスを受けられる保証はありません。「絵に描いたもちだ」「市町村任せにせず国が責任を果たすべきだ」との声があがっています。
入院患者を強引に「在宅化」させ、在宅介護サービスを後退させ、施設にも入れさせない―こんな改悪が一体で実施されれば、だれもが「住み慣れた地域で尊厳をもって暮らし続ける」(地域包括ケア方針)ことはできません。「医療・介護難民」「漂流高齢者」は増え続けるばかりです。
「消費税を増税しながら社会保障は切り捨て」
医療・介護総合法案が審議入りした4月1日、消費税率の8%への増税が強行されました。「消費税は社会保障のためと宣伝しながら、介護・医療を大改悪するのか」と批判の声が上がっています。
今年度予算で、「社会保障の充実」に充てられるのは消費税増税分の1割にすぎません。消費税増税で吸い上げた税金を、大企業減税や巨大開発・軍拡予算に流し込み、社会保障は制度解体の改悪にひた走る――これが、安倍内閣のやり方です。
国民のくらしも経済の基盤も壊され、税収減で財政再建も不可能になってしまいます。
現役世代の負担と不安を解消できる介護制度に
要介護の家族を抱えながら働いている人は890万人にのぼっています。介護を理由にした離職は年間10万人(総務省「就業構造基本調査」)。「独居老人」や「老老介護世帯」も急増するなか、高齢者はもちろん、現役世代のなかで、介護が重大な不安要因となっています。公的介護制度は、予算削減のために対象をせばめる改悪ではなく、抜本的な立て直しこそ求められます。
日本共産党は、2012年の「経済提言」で、消費税に頼らずに社会保障・財政・経済の危機を一体的に打開する道をしめしました。
(1)ムダ遣いの一掃と「応能負担」の原則に立った税制改革で財源を確保する(2)国民の所得を増やす改革で経済を内需主導の健全な成長軌道にのせ税収を増やす―ことによって、「介護難民」「入院難民」をなくし、現役世代も高齢者も安心できる医療・介護制度を確立する改革案を打ち出しています。
要支援者は介護保険の枠外にヘルパーも受けられない?
介護保険で「要支援1・2」と認定された人は160万人。介護保険サービスを受ける人の8割がヘルパーによる「訪問介護」、デイサービスなどの「通所介護」を利用しています。法案が通れば、要支援者はこの二つのサービスを保険給付では受けられなくなります。
そのかわり、市町村がボランティアや民間企業に委託して、「見守り」「配食」などの“代替サービス”を提供するとしています。しかし、このサービスは予算に上限がつけられ、市町村は国から給付費削減を義務づけられます。サービスが大後退するのは明らかです。
「再び家族で介護せよというのか」「症状が悪化し、かえって給付費が増えるだけだ」と批判の声が上がっています。
さらに、介護サービスを申請するさい、市町村などの窓口で“代替サービスが適当”と判断されると、要介護認定を行わなくてもよくなります。そうなれば、「要支援者」とも呼ばれず、保険対象外(非該当)の人と同じ扱いになってしまいます。
厚生労働省はこれまでも、ヘルパーの回数を制限したり、介護を受けられる時間を「1回=45分」に短縮するなどサービスを切り縮める改悪を繰り返してきました。今回の改悪は、「要支援者」を丸ごと保険制度から追い出していくという、かつてない内容です。
「要介護3以上」でないと特養に入れない!
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特別養護老人ホーム(特養ホーム)についても、入所できる人を「要介護3以上」に限定するという、かつてない改悪を行います。
特養ホームの待機者は、この4年間で10万人も増え、52万人を超えています。そのうち17万8千人は「要介護1・2」の人です。これらの人は、「虐待被害者」など一部の例外を除いて対象外となり、待機者の枠からも除外されてしまうのです。(右ページ図)
「長年、入所を待ち続けているのにひどい」「家族介護ももう限界なのにどうしてくれるのか」と批判の声が上がっています。
財務省の財政制度等審議会は2013年、国の社会保障費を抑制するため、介護保険の対象を「要介護3以上に重点化」することを提言しました。今回の改悪は、これを実行に移していくものです。
政府は、「サービス付き高齢者住宅」などを“受け皿”にするといいますが、月15万〜25万円の負担が必要です。特養ホーム申請者の多数は貧困・低年金であり、“受け皿”にはなりえません。
介護保険に2割負担を導入
制度発足以来1割負担だった介護保険に初めて、2割負担を導入します。高齢者全体の20%にのぼる「所得160万円以上」の人から対象になります。
在宅では、要介護1の人が7700円から1万5400円になるなど軒並み倍加。特養ホームでも、要介護1の人をのぞいて入所者すべてが負担上限額(3万7200円)に達します。
「これまで使えたサービスを減らさないといけない」「いずれ全員が2割にされる」との声が上がっています。
施設入所者の軽減措置を打ち切り――月2万〜7万円の負担増
現在、収入の少ない人が介護施設に入所した場合、食費・居住費の負担を低く抑える仕組み(補足給付)があり、103万人もの人が利用しています。
ところが、預貯金が一定額を超える場合や、世帯分離をしている配偶者が課税となっている場合は「補足給付」を打ち切り、月2万〜7万円の負担増を求めるとしています。月6万円の国民年金しか収入がない人が、月12万円もの施設利用料を請求されるなどの事態が起こってきます。
「補足給付」は2005年、それまで保険給付だった施設の食費・居住費を「全額自己負担」にしたとき、“低所得者を施設から排除しない”ためにつくられました。「約束違反だ」「施設から出て行けというのか」と怒りが広がっています。
医療――“患者追い出し”さらに加速
病気になって入院しても、早期退院を迫られる―。社会問題になっている“患者追い出し”に拍車をかけるのが、病床(入院ベッド)の大幅削減です。
安倍内閣は、高齢化のピークとされる2025年までに202万床が必要なのに、43万床も減らす計画です。
とくに看護師の人員配置が最も手厚い「7対1病床」(患者7人に看護師1人、36万床)は半減させる計画で、2014年度から2年間で9万床も減らそうとしています。
法案には、都道府県に各病院の「病床再編計画」をつくらせ、都道府県主導でベッド削減を推し進める仕組みまで盛り込みました。病院に「病床削減」や「増床中止」を勧告する権限を知事に与え、従わない場合はペナルティーまで科して在宅に押し戻していこうというのです。
政府は、今年度の診療報酬改定で、重症患者を治療する病床の削減と入院日数の制限、「在宅復帰」の実績が低い病院にたいする報酬の削減など、「入院の短期化」に向けた制度改変を行いました。
患者を早く退院させて在宅復帰させないと収入が減ってしまうため、“患者追い出し”が強まります。法制度と診療報酬の両面から“患者追い出し”を進める計画です。
しかし、厚労省の調べでも、入院日数が短くなると逆に「治癒」割合は下がっているのが実態です。
「安心して入院もできなくなる」「治癒しないうちに追い出すのか」「今でも早く退院を迫られているのに、行き場がなくなる」との声が上がっています。
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