2014年4月13日(日)
きょうの潮流
お遍路は、空海(弘法大師)ゆかりの四国八十八カ所の札所をめぐり、静かに自分と向き合う旅でもあります。巡る人々が足を休める遍路小屋で、ある張り紙が問題になっています▼「『大切な遍路道』を朝鮮人の手から守りましょう」。不穏当なよびかけの主は、「日本の遍路道を守ろう会」とあります。さらに「礼儀しらずな朝鮮人達が気持ち悪いシールを四国中に貼り回っています」「見つけ次第、はがしましょう」と続きます▼張り紙が問題にするシールとは、矢印に日本語とハングルをまじえた道案内のこと。昨年、参拝者を導く「先達」に初の外国人女性として公認された韓国の崔象喜(チェサンヒ)さん(38)が、許可を得た家などに張ったものです▼彼女は4年前、父の供養のためネットで知った四国遍路の旅に出ました。地元の人らが巡る人を気遣い、援助する「お接待」にふれました。「人はだれかに支えられて生きていることに気づいた」と感動し、韓国に伝える活動を始めました▼そんな善意をあだで返す行為にやるせない思いが募ります。張り紙は、施設管理者や自治体も「差別的」としてはがす措置をとっています▼この地と縁の深い弘法大師は、唐に渡り密教を学び、日本に持ち帰りました。近隣の国々との深い交流があって日本の文化が形作られています。弘法大師はある言葉を残しています。「人を思いやる気持ちと、人に利益をもたらす行動をすることが全ての根本である」。こんな言葉もかみしめつつ今回の一件を考えたい。